シャープへの届かぬ“想い"、鴻海の本音 鴻海の研究開発子会社、シャープ出身社長が明かす裏側
実際、郭台銘薫事長はシャープとの交渉中、社員に心構えとして言っていたのが、「共存共栄」という言葉でした。「われわれは仲間で、どちらかが上とか下ではない。日本は先生でおまえたちは生徒だ。謙虚な気持ちで交渉に当たれ」。そう社員に諭したんです。それがいちばんの心です。昨年秋も、鴻海は苦境に陥ったシャープを助けようと、実はアップル向けのシャープ部品の使用比率を上げたりしています。実は裏で手を回して助けていたのです。台湾人は、歴史的に日本人への愛着が大きいのです。東日本大震災のときの義捐金の大きさを見ても、それは分かります。
だから鴻海はあくまで、シャープの自主性を尊重するというスタンスです。鴻海はそもそも、これまでM&Aをした企業で、社長を派遣したことはありません。経営はその会社に任せ、部品調達やコスト低減を手伝うのです。堺工場もそのやり方です。出資したから、取締役に人を入れるとかはしないし、そもそもそんな人材もいません。
「交渉の矢面には立たないが、サポートはする」
――では矢野さんが社長に選ばれた理由は何でしょうか。
矢野 私はシャープにいたとき、1999年から2003年まで台湾で液晶新工場を立ち上げる仕事をしました。今回、私が社長に選ばれたのは、台湾で一緒に仕事した人が鴻海にいて、シャープの人間だから、架け橋になると思ってくれたのかもしれません。今後、交渉の矢面に立つつもりはありませんが、うまくいかない場合、サポートはするつもりです。
――シャープは、鴻海の宿敵であるサムスンと資本提携をしています。
矢野 今はサムスン向けの生産が多いから、シャープもサムスンは外せないでしょう。だから鴻海としても、資本提携したのはこちらが先なのにと、心外な部分もあると思います。ただし、今さらシャープがサムスンとの資本提携を解消できないので、今後は出資比率をサムスンと同じか、少し上くらいにして、鴻海向けのパネルを作るというのも、考えられる流れかもしれません。
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