シャープへの届かぬ“想い"、鴻海の本音 鴻海の研究開発子会社、シャープ出身社長が明かす裏側
――シャープとの協同路線から独立路線に舵を切ったという見方もあります。
矢野 確かに、シャープとの資本提携交渉がスムーズに進んでいたら、今回の日本法人設立の話はなかったかもしれません。仮に交渉がうまくいかなかったときに、補完する意味合いはあります。
ただし、ディスプレー事業の内製化は、従来からの鴻海の方針です。鴻海はもともと、部品を外部から調達して組み立て、製品に仕上げることで成長してきました。ただし、成長にしたがって、部品をどんどん内製化してきたのです。鴻海のコスト競争力の源泉は、そうした部品の内製化にあります。
今、内製化できていない唯一の大きな部品がディスプレーです。フォックスコンに本技研を設立することで、今後、傘下の台湾イノラックスの製品も含め、自社製品のラインナップを増やしていこうということです。
――単独でディスプレー事業を手掛ければ、日本メーカーとは競合しませんか。
後藤 それはありません。というのも、日本企業は多くの分野で、すでに鴻海に製造委託しており、大きな枠組みでは鴻海のパートナーだからです。ディスプレーの日本メーカーには、ジャパンディスプレイ、パナソニック、シャープがいますが、そうした企業とはまず競合しません。たとえば携帯電話でいうと、われわれはODM(設計・製造の外部委託)を手掛けていますが、ほぼ中国やインドの企業向けです。それに比べ、日本企業は最先端のパネルに特化しています。市場が棲み分けられているのです。
「シャープとバッティング、まずありえない」
――ただし、鴻海がアップル向けのディスプレーも手掛ければ、シャープの仕事を奪うことになりませんか。
後藤 そもそもアップルは1社のみからの購買はしません。基本は3カ国の企業からの購買です。したがって鴻海がアップルからディスプレーの仕事を請け負うようになっても、製造は台湾で行うため、仕事が減るのは台湾企業です。シャープとバッティングすることは、まずありません。
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