病院の「長い待ち時間」はなぜ解消しないのか 経営学と法律の観点から解決策を考える
このように、待ち時間の減少は容易ではありませんが、まったく打つ手がないわけではありません。たとえば一定範囲で予約に基づく診察が認められており、予約制を利用して需要を平準化させる方法があります。また、サービス全体のオペレーションを見直して、ボトルネック、つまり待ち時間を伸ばしている原因となる部分を探し、その部分に集中して人員を増強するなど、少ない経費でできるだけ大きな待ち時間減少効果を達成できるよう目指すことが考えられます。
待ち時間と思わせない工夫を
そのほかにも、待ち時間そのものを、できるだけ待ち時間と感じさせないような環境づくりも必要です。具体的には、待機場所での雑誌やテレビの配置、番号制の導入や、携帯電話での呼び出し、大まかな待ち時間の連絡などが考えられるでしょう。
このような手法を導入するうえでは、需要サイクルを理解する必要があります。需要サイクルとは、特定のサービスに対する需要レベルが、予測可能な範囲で上下を繰り返す周期を指します。病院であれば、4つの時間帯(朝、昼、夕、夜間)と、2つの曜日帯(平日、週末)、3つの季節帯(ピーク期、中間期、オフピーク期)を組み合わせ、4×2×3=24の異なる需要期を分析すべきであると考えます。そしてこれらの需要期に対し、それぞれ特有の改善策を検討することになります。
病院のサービスの質は、医療機関が「こんなものでよい」と押しつけるものではなく、患者側の視点を入れて検討すべきものです。医療機関が差別化を行って行ううえでは、患者さんに評価される質の高いサービスは不可欠です。このような、待ち時間といった医療行為を行う時間以外を含む医療サービス全体の「質」を担保した医療経営が、今後は必要になってくるでしょう。
これまで、医療業界において「経営」という言葉はあまり積極的に発せられず、「MBA」を取ろうという医師も比較的少数派でした。しかも医療については、医療の専門性や法律による制約などの特殊性があるため、外部コンサルタントのような医療をあまり知らない人が入ってきても、改善が容易ではないという特質があります。しかし、法規制を理解し、どのような対策が法律上許されているかを踏まえ、医療経営の観点を入れ、MBA的な手法を導入すれば、医療の問題を改善することも不可能ではないのです。
記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
印刷ページの表示はログインが必要です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
無料会員登録はこちら
ログインはこちら