1ドル100円へ逆戻り?円安シナリオに暗雲 「トランプリスク」だけではない円高要因

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さて、円高を招く、最後に重要な要因が(3)「リスクオフの円高」である。世界経済や世界の政治情勢に不安が高まり、世界的に株が売られる局面では、安全資産として円が買われる。逆に、世界経済が好転し、世界の投資マネーがリスクを取る時、円が売られる。

2016年1-6月に急激な円高が進んだ理由を今振り返ると、以下の3つが挙げられる。1)米景気悪化で利上げが先送りされ、米長期金利が下がったこと、2)米国が円安を批判し始めたこと、3)世界経済に不安が広がり世界的株安になったこと。

反グローバリズム+独裁国家の暴走リスクも

昨年11月から、トランプ政権による経済政策への期待で、米金利が上昇し、ドル高が進んできた。ところが、今になってみると、トランプ政権の経済政策が、世界経済にとって毒か薬か、わからなくなってきている。これ以上、保護主義、排外主義の政策を実行に移すと、世界経済の回復期待に水をかけることになる。

想定以上に早い時期に、トランプ大統領と金融市場の蜜月は終了するかもしれない。そうなると、世界的に株が下がり、リスクオフの円高が進む可能性も高まる。

政治不安は、米国だけに留まらない。今、世界中に「ドナルド・トランプ現象」が広がっている。自国中心主義・排外主義の過激発言で、大衆の人気を獲得する政治家が欧州やアジアに続々と現れている。ポピュリズム(大衆迎合主義)の暴走が、世界中の民主主義国家で止められなくなってきている。ポピュリズムは、反グローバル主義・反資本主義と結びつき、世界経済に不安を広げるので注意が必要だ。

世界には、もう1つ異なる種類の政治不安がある。独裁国家の暴走である。特に心配されるのは、中国と北朝鮮だ。これに対抗するため、トランプ政権は、日本・ロシア・台湾との連携を強化し、中国包囲網を作ろうとしているように見える。今年は、米中2国間に、緊張が高まるリスクがある。いろいろな政治不安が重なり、リスクオフの円高が進む可能性に、今年は注意が必要だ。

窪田 真之 楽天証券経済研究所長兼チーフ・ストラテジスト

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くぼた まさゆき

くぼた・まさゆき 1984年慶応義塾大学経済学部卒業。大和住銀投信投資顧問などで日本株ファンドマネージャー歴25年。2012年2月より現職。企業会計基準委員会の専門委員・内閣府「女性が輝く先進企業表彰」選考委員など歴任。著書に「投資脳を鍛える!株の実戦トレーニング」(日本経済新聞出版社)、「クイズ 会計がわかる70題」(中央経済社)など多数。

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