もっとも、わしのこういう考えに反対する人もおるやろうけど、その人はその人でええわけや。なかなか力強い人であると。人間には運はない。すべてがその人の力であると。実力であり、努力が人生のすべてを切り開くんやと考える人もおるやろう。まあ、そこまででなくとも努力が大きいと、運命は小さいと、そう考える人もおるんやろうな。
けどな、そう考えるとすれば、人間は努力すれば、必ず成功するということになるんと違うやろうか。
しかし、実際は決してそういうことではないわね。人生、すべて自分の意のままに動かせるということはない。それは、ひとつの運命をそれぞれが担っておるからやな。成功するためには努力しなさいという。けど、努力したと。一生懸命努力したと。あの人と同じように努力したと。けど、あの人は成功したけど、自分は失敗したと。そういう場合もあるな。それは、努力が足らんかったとは言い切れんことがある。ひとつの運命として考えんといかんわけや。
成功するには必ず努力が必要
それならば、努力せんでいいのか、汗を流さんでいいのかということになるけどな、また、これも間違いやな。わしは、運命が100パーセントと言ってはおらん。決してそうではないのであって、90パーセントやと。ということは残りの10パーセントが人間にとっては大切だということになる。いわば、自分に与えられた人生を、自分なりに完成させるか、させないかという、大事な要素なんだということや。
ほとんどは運命によって定められているけれど、肝心なところは、人間にまかせられているのかもしれん。
たとえば船があって、自分が大きい船か、それとも小さい船か、それはそれぞれの人にとってひとつの運命かもしれんが、肝心の舵のところは人間にまかせられておると。無事その船が大海を渡り、目指す港に着くことが出来るかどうか。残りの10パーセントがその舵の部分であるということやな。
鷹がスズメになろうとしても、スズメが鷹になろうとしても、それは運命であって、変えることはできんな。そこは見極めんといかん。けど、鷹は鷹なりに、スズメはスズメなりに一生懸命に生きる、懸命に努力はせんといかん。そこに、それぞれが成功する道も開けてくる。運命と努力という、船と舵の関係やな。
だから、運命が、運が90パーセントだから、努力せんでいいということにはならんね。そして努力したから、必ず成功すると考えてもあかんよ。けど、成功するには必ず努力が必要なんや。そういうようなことを、きみ、理解しておれば、自分に与えられた人生を謙虚に受け入れ、かつ力強く歩いて行くことができるよ。人生に傲慢になったらあかん。
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