松下幸之助「成功するかどうかは90%が運」 経営の神様が問わず語りに語ったこと

✎ 1〜 ✎ 20 ✎ 21 ✎ 22 ✎ 最新
著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

もっとも、わしのこういう考えに反対する人もおるやろうけど、その人はその人でええわけや。なかなか力強い人であると。人間には運はない。すべてがその人の力であると。実力であり、努力が人生のすべてを切り開くんやと考える人もおるやろう。まあ、そこまででなくとも努力が大きいと、運命は小さいと、そう考える人もおるんやろうな。

けどな、そう考えるとすれば、人間は努力すれば、必ず成功するということになるんと違うやろうか。

しかし、実際は決してそういうことではないわね。人生、すべて自分の意のままに動かせるということはない。それは、ひとつの運命をそれぞれが担っておるからやな。成功するためには努力しなさいという。けど、努力したと。一生懸命努力したと。あの人と同じように努力したと。けど、あの人は成功したけど、自分は失敗したと。そういう場合もあるな。それは、努力が足らんかったとは言い切れんことがある。ひとつの運命として考えんといかんわけや。

成功するには必ず努力が必要

それならば、努力せんでいいのか、汗を流さんでいいのかということになるけどな、また、これも間違いやな。わしは、運命が100パーセントと言ってはおらん。決してそうではないのであって、90パーセントやと。ということは残りの10パーセントが人間にとっては大切だということになる。いわば、自分に与えられた人生を、自分なりに完成させるか、させないかという、大事な要素なんだということや。

ほとんどは運命によって定められているけれど、肝心なところは、人間にまかせられているのかもしれん。

たとえば船があって、自分が大きい船か、それとも小さい船か、それはそれぞれの人にとってひとつの運命かもしれんが、肝心の舵のところは人間にまかせられておると。無事その船が大海を渡り、目指す港に着くことが出来るかどうか。残りの10パーセントがその舵の部分であるということやな。

鷹がスズメになろうとしても、スズメが鷹になろうとしても、それは運命であって、変えることはできんな。そこは見極めんといかん。けど、鷹は鷹なりに、スズメはスズメなりに一生懸命に生きる、懸命に努力はせんといかん。そこに、それぞれが成功する道も開けてくる。運命と努力という、船と舵の関係やな。

だから、運命が、運が90パーセントだから、努力せんでいいということにはならんね。そして努力したから、必ず成功すると考えてもあかんよ。けど、成功するには必ず努力が必要なんや。そういうようなことを、きみ、理解しておれば、自分に与えられた人生を謙虚に受け入れ、かつ力強く歩いて行くことができるよ。人生に傲慢になったらあかん。

江口 克彦 一般財団法人東アジア情勢研究会理事長、台北駐日経済文化代表処顧問

著者をフォローすると、最新記事をメールでお知らせします。右上のボタンからフォローください。

えぐち かつひこ / Katsuhiko Eguchi

1940年名古屋市生まれ。愛知県立瑞陵高校、慶應義塾大学法学部政治学科卒。政治学士、経済博士(中央大学)。参議院議員、PHP総合研究所社長、松下電器産業株式会社理事、内閣官房道州制ビジョン懇談会座長など歴任。著書多数。故・松下幸之助氏の直弟子とも側近とも言われている。23年間、ほとんど毎日、毎晩、松下氏と語り合い、直接、指導を受けた松下幸之助思想の伝承者であり、継承者。松下氏の言葉を伝えるだけでなく、その心を伝える講演、著作は定評がある。現在も講演に執筆に精力的に活動。

この著者の記事一覧はこちら
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

関連記事
トピックボードAD
キャリア・教育の人気記事