日本の「1人あたり」輸出額は44位に過ぎない 本当に「ものづくり大国」といえるのか

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こういう話をすると必ず、建設的になれずに、日本の位置を正当化する方がいます。そういう方は、全体を無視して、例外を持ってきて正当化しようとします。おそらく、米国の例を出すはずです。

確かに、米国は第43位です。それを根拠に、「1人あたりの輸出額など気にしなくていい」という反論も出ます。これまで日本経済は米国とともに歩み、その背中を追いかけてきたと言っても過言ではありませんので、そのような反論も一定の説得力があります。しかし、これからの日本が置かれる状況を考えると、米国と自分たちを重ねることは、必ずしも適当ではないと言わざるをえません。

米国に追いつく戦略は、もう時代遅れだ

まず、最大の理由は「人口」です。日本が急速に少子高齢化しており、これから人口が減少していくのに対し、米国はいまだに人口増加が継続しています。3億2000万もの人口を抱えた米国経済は輸出に依存することなく、内需だけでも十分成長できます

また、「米国の世界に誇る技術」などという自慢をあまり聞かないように、米国は日本のように「ものづくり」をそれほど売りにしていません。つまり、日本が自らの進むべき道を考えたとき、比較する相手としては適当ではないのです。

では、どこと比較するのが適当なのでしょうか。同じような生活水準、教育水準をもつ先進国で、同じくらいの人口を擁するとなると、やはり欧州でしょう。30年後の日本を見据えたら、中国、インド、米国などの人口大国のグループではなく、人口を含めた国家の大きさとして欧州のグループに収斂することは間違いありません。中でも、世界から「技術大国」という評価を受けているドイツと比較するのが妥当だと思われます。

そうなると、先ほども申し上げたように、日本の人口はドイツの1.57倍なのに、輸出額はドイツの48.3%しかありません。1人あたり輸出額で見ると、日本はドイツの3分の1ほどです。他の欧州各国の1人あたり輸出額も、日本と米国のかなり上をいっています。

テレビでは「日本の技術は世界一」だとふれまわっています。さらに、「ものづくり大国」として単純に技術力が高いだけではなく、日本人の給料も先進国の中でかなり割安になっています。さまざまな面で優位性がありますので、理屈としては輸出額がかなり高い水準にあるはずです。

しかし、現実はそうなっていません。マスコミや評論家の皆さんが声高に主張されているように、日本が世界に誇る技術大国であれば、このようなポジションであるはずはないのです。ひとつだけはっきりと断言できるのは、「日本の技術は世界一」という意識と、輸出額という現実の間にはあまりにも大きなギャップがあり、多くの日本人はそのギャップが存在することにすら気づいていないということです。

中には、これだけ高い技術がありながらも輸出に依存していないのが日本のすばらしい点だと正当化する人がいます。しかし、ここまで相対的貧困率が悪化し、国の財政状況も苦境に追いやられている中で、そのような理屈はただの「屁理屈」にしか聞こえません。日本人の子供の6人に1人が貧困状態にあるという現実の前に、そのような「のんき」なことを言っている場合ではないはずです。

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