養命酒が軟派なキャンペーンを連発するワケ デカふにゅ、ゴルゴ13・・・その狙いは?

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ゴルゴ13シリーズのアタッシュケースはドイツのRIMOWA社製だ(写真:養命酒製造)

2015年12月にはコップのフチ子さんとのコラボで、フチ子さん人形に着替えが付いた、「温もりのお着替えセット」。そもそも人形本体が着ている服が、養命酒マーク入りの赤いTシャツに茶色のスカート、茶色のタイツに黄色い靴と、かなりやぼったい。が、このフチ子さんに、オークションサイトで十数万円の値が付いている。

業績は頭打ちに

養命酒は慶長年間から信州伊那郡の庄屋・塩沢家に伝わる薬用酒をルーツとし、徳川将軍家に献上されたり、かの赤穂浪士も飲んでいたとされる。法人化して大量生産を始めたのは1923年。以来90年以上の歴史を有するロングセラー商品だ。第2類医薬品なので、販売されているのはドラッグストアや薬局。異なるサイズを出すにも許認可を要する。

販売元の養命酒製造は1955年に株式公開し、現在は東証一部に上場している。養命酒の売上げは1998年3月期の196億円をピークに漸減が続いている。2011年3月期に底を打ったが、高齢化が進む中、養命酒だけでの成長はもはや見込めない。このため、近年は研究開発費を投じ、養命酒以外のハーブ系の酒類やエイジングケア商品の拡大に舵を切っている。

養命酒の主戦場は冬場。夏場は売上げが落ちるので、このWeb限定キャンペーンは冬と夏に集中的に展開している。担当、企画しているのは、養命酒製造マーケティング部のWeb担当者。狙いは「若年層に養命酒を知ってもらう」(鳥山敦志専門課長)ことにあるという。

養命酒の主要顧客層は高齢化が進んでおり、祖父母世代との同居世帯の減少で、「おばあちゃんが飲んでいた」から子どもが養命酒を知っていた時代は過去のものとなりつつある。子ども世代が養命酒を知る機会はほぼなく、単語を耳にしてもモノを思い浮かべられない層は増加傾向にある。

若年層に養命酒を知ってもらうにはどうしたらいいのか。そこで思いついたのが、SNSを通じたクチコミ拡散だ。高齢者層と親和性が高いテレビCMは従来の路線を堅持し、若年層と親和性が高いネットでは一連の奇抜な企画を進めている。「とにかくどうしたらツッコんでもらえるかを日夜考えているが、クオリティには絶対的な自信を持っている」(鳥山課長)。

当初はここまで尖った企画では、固定顧客層から批判が出ないか懸念したが、予想に反して批判は出なかったと、会社側は説明する。

一連のキャンペーンは、すぐに購買に結びつくものではないが、固有名詞と効能をスリ込むことで、いつかは手に取ってもらえるかもしれない、という願いのもとに展開されている。実は真面目で正攻法、かつコストも抑えた宣伝戦略だが、実際に実を結ぶのは相当先になりそうだ。

永谷 薫 東洋経済 記者

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ながや かおる / Kaoru Nagaya

繊維、化学、小売りなどの業界を幅広く担当。

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