日本にもくる?欧米でブーム「ヒュッゲ」とは デンマーク流の癒やし時間に皆夢中
シェフのヨハンセンは著書『ハウ・トゥ・ヒュッゲ』で、ヒュッゲなレシピを紹介する。グロッグ(ホットワイン)やミューズリー、フルーツコンポート、塩漬け干しダラのフリット、子羊のローストなど、彼女が現代的にアレンジした北欧料理がずらりと並ぶ。
一方、ブリッツの『ブック・オブ・ヒュッゲ』は、インテリアでも料理でもなく、マインドセットとしてのヒュッゲを説く。それは木の椀のぬくもりやビンテージの織物を愛でることであり、恋人と一緒に歯磨きをしたり、全裸で時間を過ごしたりすることであり、吊り下げの照明具、丸テーブル、焦げた木ベラ、古い靴、ガチョウの鳴き声、洗いたてのシワの入ったシャツにヒュッゲを見出す。
セレブなヘルシーブームへの反動?
ブリッツは、「ヒュッゲは見せかけでなく、花の命のようにはかないものだ」と説く。それを聞いて納得する読者もいるだろうし、思わずプッと吹き出してしまう読者もいるかもしれない。実際、ヒュッゲブームが起きている英国では、それをおちょくる論調も少なくない。
ジャーナリストのジョン・クレースはガーディアン紙で、『リトル・ブック・オブ・ヒュッゲ』にうっとりするような人間は、いいカモだと評している。「デンマーク人がよその国の人よりもずっとハッピーなのは、あの国ではやることがものすごく少ないからだ。何事に対しても期待が極めて低いぶん、喜びが大きい」
ウォール・ストリート・ジャーナル紙の男性ファッションエディターのジェイコブ・ギャラガー最近、「ヒュッゲは2016年版の『わび・さび』だ」とツイートしている。
ではなぜ今、ヒュッゲがウケているのか。広告代理店ジェイ・ウォルター・トンプソンの未来研究者ルーシー・グリーンは、「ウェルビーイング・ブーム」への反動だと分析する。1着100ドルもするレギンスや、1杯10ドルもするジュースクレンズに代表されるエリート主義的なライフスタイルに、人々は嫌気が差してきたというのだ。
「ヒュッゲはもっと個人的な経験で、手軽に取り入れることができる」とグリーンは語る。「ヒュッゲは『形から入る』ものではなく、暮らしの味わいを重視する。それが冬が長く暗い国から来たのは驚きではない。それが先行き不透明な現代にぴったりマッチしている」。
だからといって、ヒュッゲブームが小売り業界に与える影響がゼロというわけではない。「繊維製品や家庭用品にはヒュッゲブームが来るだろう」とグリーンは予測する。「手頃な価格のカシミアやキャンドルまで幅広いはず。1990年代のマイホームブームに似たものになるだろう」。
(執筆:Penelope Green記者、翻訳:藤原朝子)
© 2016 New York Times News Service
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