日本にもくる?欧米でブーム「ヒュッゲ」とは デンマーク流の癒やし時間に皆夢中
「デンマーク人にとって、ヒュッゲは文化の一部。米国人が自由を持って生まれたコンセプトと考えるのと似ています」。
バイキングはちょうど、著書『リトル・ブック・オブ・ヒュッゲ(The Little Book of Hygge)』の宣伝のために数カ国を回る旅から戻ったところだった。この本はすでに英国でベストセラーになっており、米国でもこの1月に発売になる。いまやひとつのジャンルになった「ヒュッゲ本」の中でも、最も魅力的な1冊かもしれない。
実際、昨年は20冊以上のヒュッゲ本が刊行された。とはいえ、まだ整とんブームの近藤麻理恵ほどの「教祖」的存在は生まれていない。いや、もしかすると、「このブームで一番の有名人」という考え方自体が、ヒュッゲのコンセプトに反するのかもしれない。
今年もヒュッゲ本の刊行は目白押しだ。1月はほかにもノルウェー人女性シェフでフードライターのシンヌ・ヨハンセン著『ハウ・トゥ・ヒュッゲ――北欧流ハッピーライフの秘密(How to Hygge: The Nordic Secrets to a Happy Life)』が刊行される。2月には、ヒュッゲ・ドットコムというウェブサイトでデンマーク家具を販売するルイーザ・トムセン・ブリッツ著『ブック・オブ・ヒュッゲ――デンマーク流の満足、快適、つながりのアート(The Book of Hygge: The Danish Art of Contentment, Comfort and Connection)』が刊行される。
「風水ブームを思い起こさせる」と、ハーパーコリンズ社のエグゼクティブエディターのキャシー・ジョーンズは言う。「どこか馴染みがあるけれど、新鮮に感じられるものをよその文化に見出そうという試みだ」。
外食でなく家で家族や友達とあったまる
英ガーディアン紙のパトリック・キングズレーは、2012年の著書『デンマーク人になる方法(How to Be Danish)』で、デンマークではあらゆることがヒュッゲになると書いている。自分の自転車もヒュッゲリ、誰かのテーブルセッティングもヒュッゲリ、コペンハーゲンのお洒落な地区ヴェスタブロを散策するのもヒュッゲリだ。
……で、要するにどうすればヒュッゲな暮らしができるのか。それにはまず、うちに帰って「巣ごもり」すること。ヒュッゲクログ(人目につかない隠れ家)ならなおよい。それから毛布にくるまってソファに座り、友達とコーヒーを飲みながら、連続殺人事件の特集番組を見る。
デンマーク人が巣ごもりを芸術の域に高めた一因は、外食が非常に高くつくからだろうと、キングズレーは著書で推測している(デンマークではレストランで食事をすると、25%の付加価値税がかかる)。
おどろおどろしいテレビ番組や、嵐などの荒天は「ヒュッゲ度」を高める効果があると、バイキングは語る。彼の著書によると、デンマークの1年間の平均降雨日数は179日。そんななか温かい部屋で過ごすほっこりした時間は、極上のヒュッゲだ。