あえて「1日6時間労働」と決める絶大な効用 大きな仕事ほど細かく分けるとうまくいく

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「仕事の量は、完成のために与えられた時間をすべて満たすまで膨張する」という「パーキンソンの法則」をご存知でしょうか? 仕事を仕上げる時間は、実は一定ではなく、締め切りに合わせて伸び縮みするのです。

私は部下に「この仕事、何時間で完成?」と見積もりを聞いて「1日です」と言われたら、「じゃあ、3時間でやってみて」と切り返していました。初めこそ「無理です」と言われますが、「とにかく3時間後に持ってきて」とさらに返すと、たいていの人は何とか完成させてくるのです。そのたびに「こんなに集中したのは初めてです」とよく言われました。残念ながら、普段はそれだけ集中できていないということです。締め切りまでの時間を短くすることで、早く終わらせるためにやり方を工夫するようになります。

職種によるのでは?という声が聞こえてきそうですが、これはコンサルティングの仕事に限った話ではありません。たとえばシステム開発のプロジェクトマネージャーが、同様のことをメンバーに指示することで、当たり前だと思っていた進め方を見直すことになり、大きな時間短縮が図れたというケースもありました。

半分の時間にするというチャレンジ目標はちょっとした効率化だけではなかなか達成できません。無駄な作業を削ぎ落としたり、順番にやっている業務を同時並行で処理することにしたり、作業場所を変えたり、承認や確認の取り方を簡素化するなど知恵を総動員しなくては……という意識に火をつけるのです。

私はビジネススキル研修の講師も数多くやっていますが、個人やチームでの演習で制限時間を設けずに実施した場合と制限時間を短めに設けて実施した場合で違いを見てもらうことがあります。すると制限時間を短めにしたほうが、出てくるアウトプットも質が高いということ、そして実行した本人の満足度や達成感が高いことに皆さんが驚かれます。自分をコントロールできるという意識は自己肯定感を強め、仕事への充実感を上げることもできるわけです。

大きな仕事は細かく分ける

さて、「提案書を作成するための時間を3時間確保できた。じっくり作ろう!」そう思って始めたのに、気がつけば時間切れ、今日も残業……という経験はないでしょうか?

これは、作業工程の見積もりが甘いことが原因です。提案書作成に3時間かける、ではなく、たとえば「情報収集30分、仮説構築30分、メッセージと構成作成45分、スライドイメージ作成45分、パワーポイントで作成30分」と作業工程ごとに時間を見積もりましょう。こうすると5分も無駄にできないことが実感できませんか? できれば、タイマーなどを仕掛けておくとさらに集中せざるをえない状況になります。

作業時間を分ける基準としては、「発散する」「収束する」「形にする」という3つです。

発散とは情報を広く集める作業、収束はまとめたり結論を出す作業、形にするは資料などにする作業です。この3つは考える方向性が異なるため、同時にやるとスピードが出にくくなります。

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