監視カメラやNシステム、DNA鑑定も危ない 警察の「デジタル捜査」で個人情報は大丈夫か
警察の犯罪捜査は大きく分けると、「任意捜査」と「強制捜査」に分けられる。強制捜査には2種類あり、人に対する強制捜査が逮捕・勾留で、物や場所に対する強制捜査が捜索・差し押さえ・検証などである。いずれもその法的な根拠は刑事訴訟法(刑訴法)だ。警察官が強制捜査を行うときには、裁判官の発する令状が必要で、これを令状主義といっている。
一方、任意捜査とは、相手方の承諾に基づいて行う捜査をさす。捜査は任意捜査が原則だ(犯罪捜査規範〈国家公安委員会規則〉99条)。任意捜査には、刑訴法で直接決められているものと、刑訴法197条1項(捜査に必要な取り調べ)を受けて、規範101条(聞き込みその他の内偵)で決めているものがある。
任意捜査のうち、刑訴法で直接決められたもののひとつが、197条2項の公務所、公私の団体に対する「捜査関係事項照会」。これで警察は市民の個人情報を入手することが可能である。同条3項はプロバイダーなど電気通信事業者にその業務上記録している電気通信の送信元、送信先、通信日時その他の通信履歴の電磁的記録を消去しないよう、書面で求めることができる規定である。コンピュータ監視法とも呼ばれる。
現状で聞き込みや尾行、張り込み、さらに緊急配備や検問、職務質問など、伝統的なアナログ捜査が検挙に占める比率は、決して高くない。
データ分析ばかりの”パソコン刑事”
現場の捜査員たちは、聞き込みや尾行について、特別な訓練を受けているわけではない。先輩たちから見よう見まねで学ぶのだが、日常発生する窃盗事件では、手掛かりはほとんどないから、聞き込みなどの継続捜査はあまり行わない。被害届を受理し、現場の指紋採取ほか鑑識活動、実況見分の結果を捜査書類に記録し、未解決事件としてロッカーに保管するだけである。伝統的なアナログ捜査が実際に行われるのは、殺人事件のような捜査本部事件の場合くらいだ。
最近では、パソコンの前で終日、データ分析ばかりしている刑事を、”パソコン刑事”と呼んでいるという。捜査のデジタル化で現場の捜査員が街へ繰り出す機会が減っているようだ。聞き込みはしない、協力者もいない、市民との接点も会話の機会も減る。これら悪循環が捜査力の低下を招く。
こうした情勢下、何とか検挙率の低下を食い止めたい警察にとって、捜査手法のデジタル化は願ってもないことだ。だが、デジタル捜査の手法はいずれも、市民のプライバシーの権利を侵害するおそれがある。それにかかわらず、法的な根拠を欠いている。警察庁はこうしたデジタル捜査が事件の検挙にいかに寄与しているかのデータをほとんど公表していない。
そして、デジタル捜査の筆頭が監視カメラ、言い換えれば防犯カメラだ。いまや防犯カメラは、道路だけでなく、鉄道などの公共交通機関、銀行、コンビニ、マンションはじめ、ありとあらゆる場所に設置されている。
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