監視カメラやNシステム、DNA鑑定も危ない

警察の「デジタル捜査」で個人情報は大丈夫か

民間の防犯カメラは、全国で約330万台(推定)、JRなど駅に約5万6000台あるとされ(国土交通省)、第189回国会法務委員会平成27年6月16日議事録によると、警察が設置した防犯カメラは、2014年3月末現在、21都道府県で1165台とされる。いまや都市部に暮らす市民は、防犯カメラに映像を残さず、目的地に行くことは不可能だ。

市民の多くは防犯カメラで犯罪を防げると思っているようだが、警察庁の研究結果でも、犯罪抑止のためには防犯カメラの設置を含めた総合的な防犯対策が必要だとしている。

実際に防犯カメラを数多く設置しているコンビニでも強盗事件は絶えない。最近の捜査では、事件発生時に捜査員が真っ先に行うのは、現場周辺の防犯カメラを確認し、設置者に画像の提出を求める作業だ。今の警察にとって、防犯カメラの画像なしの捜査は考えられない。ただ、その画像はれっきとした個人情報であり、被撮影者は警察に提供したり、公開することを承諾したりしているわけではないのだ。

民間企業に対し警察が画像の提出を求めるときには、裁判官の発する捜索・差押許可状を示すことはほぼない。基本的には刑訴法197条2項にある、警察署長名の捜査関係事項照会書を使うようだが、口頭だけというケースもあるようだ。捜査関係事項照会は任意捜査の手続きだから、設置者は提出を拒むことも可能だが、実際に拒むことはほとんどない。

「顔認証装置」を導入、瞬時に見つけ出す

防犯カメラと称する捜査用の監視カメラは、設置や管理、画像の保管、利用に関する法的な規制はない。市民の個人情報であるはずの画像が、いとも簡単に警察へ提出され、それが手配書に使われたり、写真の面割りの捜査などに利用されるのである。最近では身元を割り出すため、マスメディアに公開されることも目に付く。もし、現在の犯罪捜査に防犯カメラを必要とするなら、個人情報保護の観点から法律をもって根拠を明確にし、プライバシー保護に一定の規制を行うべきだ。

ちなみに防犯カメラは、捜査にだけ使われているのではない。警視庁では2011年以降、民間の防犯カメラと警視庁の写真データベースを結ぶ「顔認証・照合システム」(三次元顔画像識別システム)を運用している。続く2014年には、雑踏にカメラを向けると瞬時に特定の人物を見つけ出すことができる、「顔認証装置」が全国5都県の警察によって導入された。これらは警察による、いわば膨大な検索装置だろう。

対象とするのは被疑者写真のデータベース。が、刑訴法上では身柄の拘束を受けた被疑者について許される写真撮影なのに、実際には任意捜査の被疑者も撮影している。その数は膨大で、もちろん警察にはほかに運転免許証の写真もあり、これを捜査に使うことも不可能ではない。

捜査は秘密裡に行うことが原則だ(規範9条)。警察庁は1972年に「警察庁指定被疑者特別手配制度」を設け、一定条件のもとで公開捜査を行っている。さらに2007年からは「捜査特別報奨金制度」を導入、国民からの情報提供を求める制度を開始した。

が、被疑者は推定無罪の原則からして、まだ”犯人”ではなく、公開には慎重でなければならないはず。近年では指名手配もされていない被疑者の画像が無原則でマスメディアに提供されており、ひいては警察が防犯カメラを通して国民のプライバシーを監視しかねない。

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