日本経済は、さらに半世紀「ゼロ成長」が続く これまでの数十年は、まだいい時代だった

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日本では生産年齢人口の減少ペースが総人口のそれを上回るため、事態の深刻さに拍車がかかりそうだ。国立社会保障・人口問題研究所によると、今後45年間で日本の総人口は約3割減少し、中でも20〜64歳の人口は約4割減る見通しだ。

そうなると、2015年に1対1だった就労者と非就労者の比率は、60年までに0.8対1になる。つまり生産性が2割程度増えないかぎり、この間の1人当たりGDPを横ばいに保ち、現在の生活水準を維持することすら不可能となるのだ。

生産性向上が不可欠な状況下にありながら、日本は景気減速に苦しんでいる。1980年代に就労者1人当たり実質GDPは年率で3.5%増えていたが、2015年まで10年間の生産性の伸び率はわずか年0.5%だった。安倍晋三首相はアベノミクスでこの状況を逆転させると公約したが、これまでのところ失敗している。

逆転はあり得る

過去四半世紀は「失われた数十年」と呼ばれる。だが、将来この時期を振り返れば、「古き良き時代」と思えるかもしれない。

もちろんアベノミクスの「第3の矢」である構造改革を通じ生産性を高めることができれば、状況は変わる可能性がある。仮に生産性が年率2%向上すれば、1人当たりGDPは年率1.6%のペースで増える。

この状況はありえないわけではない。日本には「後進性の利点」があるからだ。成長が世界基準に比べて立ち遅れている国ほど、伸びしろは大きくなる。

近年、米国では生産性革命が起きた一方、日本は停滞していた。だからこそ、生産性改善の余地があるともいえるのだ。

週刊東洋経済12月31日・2017年1月7日合併号

リチャード・カッツ 東洋経済 特約記者(在ニューヨーク)

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Richard Katz

カーネギーカウンシルのシニアフェロー。フォーリン・アフェアーズ、フィナンシャル・タイムズなどにも寄稿する知日派ジャーナリスト。経済学修士(ニューヨーク大学)。目下、日本の中小企業の生産性向上に関する書籍を執筆中。

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