今、手のひらの上で経済革命が起きている。スマートフォンやそれを形にしたデジタル技術は世界中に普及しており、金融を中心とする経済発展にも今後さらなる変革を起こすだろう。変革のスピードが速ければ速いほど、世界中の人々が受ける恩恵も大きくなる。
スマホやインターネットの普及により、現金やリアル店舗の必要性は薄まりつつある。その結果、金融機関のコストは削減され、過疎地の低所得者層の人々でもサービスを享受できるようになりつつある。
ただし新興国は、まだそうした状況には至っていない。新興国の全成人の45%に当たる約20億人が、金融機関やモバイルマネー運用会社の口座を持たず、女性や貧困層、農民になると、口座を持たない層の比率はさらに高まる。
また、少なくとも2億社の中小企業が、信用不足によって融資を受けられない状態にある。中小企業に資金が回らなければ、新たな成長企業の登場やそれに伴う経済成長を実現できない。
とはいえマッキンゼー・グローバル・インスティテュート(MGI)の最近の報告によると、スマホをはじめとするデジタル技術によってこうした問題は迅速に解決され、より包括的な成長が促されそうだ。
デジタル金融の2つの利点とは
デジタル金融には2つの利点がある。ひとつがコスト削減である。MGIの試算では、金融機関が口座をデジタル化すれば約8~9割ものコスト圧縮が可能になる。
その結果、金融機関は小口の口座でも採算が取れ、低所得層の顧客のニーズを満たせるようになる。また企業の現金取引をデジタル決済に移行することで労働コストも節約できる。徴税のデジタル化の影響も同様だ。そうして節約した国家の予算を別の公共投資に充てることもできる。