米国では大統領が交代すると、政策面で大きな変化が起きる。ドナルド・トランプ次期大統領も多くの変化を起こそうとしている。
その中で残念なのは、TPP(環太平洋経済連携協定)が封印されてしまうことだ。TPPは知的財産権に革命をもたらし、関税や非関税障壁の引き下げにつながるはずだった。今後、TPPの復活に向けて、歯車が逆回転する可能性は低い。
「歓迎すべき変化」起きる可能性も
とはいえ中東政策に関しては、トランプ政権は歓迎すべき変化を起こす可能性がある。
トランプ政権に先立つジョージ・ブッシュ氏とバラク・オバマ氏の両政権による中東政策は失敗に終わったといっていい。ブッシュ政権はアフガニスタンとイラクに侵攻した。オバマ政権はイラクから米軍を撤退させた。
オバマ氏は米国がイラクで一定の影響を持ち続けることの重要性を認識してはいたが、中東における米国の関与拡大に及び腰だった。そして米軍の撤退完了以降、中東での紛争は激化してしまった。
トランプ政権は両政権の中東政策の反省を踏まえ、何をなすべきかを慎重に考える必要がある。
まず、サウジアラビアや他の湾岸諸国が、イスラム教スンニ派の過激派グループを資金支援しているからといって、サウジを非難するのは賢明な選択ではない。
米国は現在、シェールガスの採掘によってエネルギー自給率を高めている。しかし欧州の同盟国はそうではない。米国がサウジに厳しい態度を取ることが、巡り巡って米国の国益につながるかは、甚だ疑問である。
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