創部7年の野球部が、日本一になれた理由 新興野球部、躍進の陰にアメーバ経営あり

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一昔前の大学は授業にあまり出なくても、野球をしっかりやっていれば卒業できるケースが少なくなかったが、最近の学生は授業への出席を求められるようになった。ほとんどの大学では午後に全体練習が組まれているものの、選手が授業を終える時間はバラバラで、そろって体を動かせる時間は意外に少ないという。

だが、桐蔭横浜大学では月曜から土曜まで、毎朝8時から12時まで全員で練習することができる。集中して汗を流し、午後は授業へ。日曜はグラウンドを使えないため、1軍は対外試合で実戦経験を積み、2軍は休養に充てる。確かに練習時間は他校より少ないが、「メリハリをつけ、集中してやるから効果が出る」と齊藤は言う。

限られた時間の中で、選手を集中させる工夫も施されている。齊藤が組織作りの根底に置くのが、京セラの稲盛和夫名誉会長が考案したアメーバ経営のような手法だ。

「怒るとき」と「怒らないとき」

アメーバ経営を簡単に説明すれば、企業の社員を小集団のグループに分け、それぞれにリーダーを置いて時間当たり決算の最大化を図るものだ。責任を与えられた社員は何とか知恵をひねり出そうとし、目標を達成するまでの過程で自覚を持ちながら、企業の経営に参加している意識を強めていく。

齊藤は野球部を投手、捕手、内野、外野、打撃、走塁、バントなどに区分し、それぞれに選手からチーフ、副チーフを選出し課題を検討させている。2週間に1度、チーフ会議を実施し、部門別に現状を報告させる。齊藤が口を挟むのは、方向性が間違っている場合のみだ。その後は部門別で選手たちが課題を議論し、目標と練習メニューを決定する。齊藤は「赤字を出さず、プラスに持っていきなさい」と伝え、練習での指導はコーチに任せる。

「自分たちで考えれば、責任を持ちます。組織として必要だからやらせているのと同時に、社会に出たら求められることでもある」

齊藤は基本スタンスとして、「選手が考えて言ってきたことに対し、絶対に否定しない」。怒られた学生は、思考を放棄してしまうからだ。一方、考えていない選手や、準備不足の者には「ものすごく怒る」。考えていない者や、先を見据えて行動できない選手に成長はないからだ。

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