マスコミの「トランプ評価」は偏り過ぎている 2017年の米国経済は年3%の成長が可能だ

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そして、日本の経済メディアもそうしたバイアスに影響、トランプ氏という人物の評価にもバイアスがかかっているのではないか。

トランプ氏のこれまでの経歴を描いた書籍は多く、それらにも一定のバイアスがあるが、中には現在のメディアの報道よりもより客観的なものもある。

政治しか知らない政治家よりも経済を再生する力がある

筆者は、改めてトランプ氏について書籍を読んでみた。トランプ氏は不動産王といわれるが、恥ずかしながら書籍を読む前は「もともと大きな家業の不動産業を後継する裕福な家系に育ち、事業の拡大を成功させてきた御曹司だろう」と、想像していた。

しかし、実際にはマンハッタンの不動産開発への進出は、若かりしトランプ氏が、父の反対を押し切ってまで自ら考え仕切ったビジネスであった。

また、トランプ氏は、軍隊式の規律が厳しい学校で学び、その後経営学を学び、野球でも中心選手として活躍してきた。飲酒をしないことも有名で、ビジネス拡大に何より意欲的である。

不動産・ホテル事業だけではなく、カジノ、プロレス、さらには自らが人気番組の司会者になることでメディアなど、様々な領域に自ら活動の領域を広げていった。こうした経歴をみれば、ビジネスマンとして極めて優秀である。政治の世界しか知らない伝統的な政治家よりも、少なくとも経済を再生させる能力があるようにみえる。

もちろん、マイノリティに厳しくかつ非常識な発言、2度の離婚など自らのプレイボーイぶりを恥ずかしげもなくアピールする姿勢、部下やメディア関係者からの暴露話からうかがいしれる自己中心的な気質、などから大統領が務まる人物ではないという懸念もあるかもしれない。

だがテレビを通じて、トランプ・ブランドを広めるためのキャラ作りの結果、作り上げられた側面も相当あるようにみえる。メディアが自らを自虐的に扱うことを受け入れ、そして独自のキャラクターを作り上げ、テレビで高視聴率を得ることは、本業のトランプ・ブランドを拡大させる戦略だったとみられる。

これらは政治家として素晴らしい能力であるように筆者は考える。トランプ次期政権に危うさがあるし、また掲げられている経済政策の中には、保護主義政策など害悪が大きい政策があることは確かである。ただ、トランプ氏はビジネスマンとしての資質を発揮し、成長率を高める経済政策を優先させると筆者は予想している。

村上 尚己 エコノミスト

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むらかみ なおき / Naoki Murakami

アセットマネジメントOne株式会社 シニアエコノミスト。東京大学経済学部卒業。シンクタンク、外資証券、資産運用会社で国内外の経済・金融市場の分析に従事。2003年からゴールドマン・サックス証券でエコノミストとして日本経済の予測全般を担当、2008年マネックス証券 チーフエコノミスト、2014年アライアンスバーンスタン マーケットストラテジスト。2019年4月から現職。

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