また税率引き下げに加えて、トランプ氏が掲げる税制改革には、設備投資を促す制度改革(加速度償却制度の導入)も含まれている。法人税率によるキャッシュフローの底上げに加えて、税制面から米国企業が設備投資を促す制度が整う可能性がある。
2016年までは、米国経済は個人消費頼みの成長が続いていた。原油ブーム崩壊による資源セクターの設備投資急減もあり、企業の設備投資の停滞が続いた。だが、企業が設備投資に前向きになり始めれば、米経済の成長率はかなり押し上げられると筆者は予想する。財務長官に就く見通しのスティーブン・ムニューチン氏は3-4%の経済成長は達成可能と公言している。
米国経済は3回利上げが可能なほど成長加速へ
当社エコノミストは、2017年の米経済は3%の成長を予想、トランプ氏の大統領選挙勝利直後から、政策金利であるFF金利は、2017年は2回以上の利上げになると想定していた。当社にとって今回FOMCでのドットチャートのシフトは想定内だが、利上げに慎重なイエレン議長が、2017年内の3回利上げが可能と判断できるくらい、成長加速が実現するとみている。
ところで、一方、異端児であるトランプ氏が大統領となり本当に2017年から米国経済の成長率が高まるのか疑問に思われる方は多いかもしれない。11月の米国の大統領選挙は、ポピュリズムの勝利によってトランプ氏へ勝利がもたらされたなどと批判的に伝えるメディアが多数である。実際に、トランプ次期大統領に対して各地で抗議デモが起こったことが「米国社会の分裂・苦境」であると言われる。
だが、大統領選挙が接戦になるのは毎回のことであり、2000年の大統領選挙は投票数の数え直しまで行われた。それに比べれば、今回はトランプ候補の勝利ははっきりしている。
また、2000年の大統領選後に、米国社会で何か深刻な亀裂が深まったかといわれると、そうは思われない。事前のメディアの想定が裏切られたというが、元々大接戦の選挙戦だっただけで、どちらの候補が勝利してもおかしくない選挙だった。クリントン候補に肩入れしていた、多数のメディアが勝利の希望的な観測を抱き報じていたように思われる。
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