親が子どもにうっかり授ける「裏の教育」 「人格否定しなければ叱っていい」は大間違い
そうすると、何かをできていない友達を見つけると、とがめたり責めたりするようになってしまう。弟や妹に対しても、同様です。
親が意図した「表の教育」は身に付かなくて、意図しない「裏の教育」だけが身に付いてしまう。「裏の教育」っておそろしいんですよ。
「勉強しないとおやつ抜きだよ」とか「片づけしないと、テレビ見られないよ」って言う「罰則型」の親御さんも多いですけれど、あれも同じです。それで勉強とか片付けとかをするようにはならないんですね。
代わりに何が身に付くかというと、「罰則型」の言葉です。お友達に対して「何々しないと、遊んであげないよ」とか言うようになる。
そうやって必ず、意図しないものが伝わるんだよね。
忘れ物する子は叱っても直らない
それからよく「子どもが忘れ物をしても、ほうっておけばいいんだ。困ったほうが、自分で懲りて直るから」っていう親御さんがいるけれど、これも間違いです。わたしの経験だと、こういう「自業自得方式」で直った子はひとりもいません。
忘れ物が直るって、簡単な話じゃないんですよ。まず自己管理力が必要だし、整理整頓能力、段取り力、意思力とか、いろんな能力が総合的に必要なことだから。それに、モチベーションも重要です。「忘れ物しちゃいけない!」って強烈に思うこと。子どもは、そういうのがないんだよね。
ほうっておいて直るとしたら、もっとずっと大きくなってからですよ。忘れ物をして「ああ、おれは本当にこのままじゃ困るな。今のうちに直さなきゃ、おれの将来真っ暗だ」と思うような経験をして初めて、強いモチベーションが生まれてくるので。
その代わりに子どもは「自業自得方式」を身につけます。たとえばお友達が忘れ物をしたときに、そういう子は助けてあげない。だって、それで困ったほうが本人のためになる、と思っているから。無意識的に、そういう行動になってしまうんです。
――なるほど。では忘れ物が多い子の親はどうすればいいんでしょう?
手伝ってあげて、いいんですよ。「手伝ったら、自分でできるようにならないからダメ」なんていう人もいるけれど、そんなことはない。そういうのも、親や先生の太古からの思い込みのひとつですよね。
最初は親がいっしょに準備をして、やり方を教える。次に「自分で準備してごらん」と言って横で見ていて、最終チェックをしてあげる。次の段階は、決まった時間が来たら自分で準備をさせる、といった具合です。
ステップバイステップですよね。三歩進んだら二歩下がるかもしれないし、それでも直らない子はいるんだけど(笑)、「ほうっておけば直る」ってことだけは絶対にありません。
――手伝ってあげていいと聞いて、なんだかほっとしました。叱る必要はないわけですね。
そうです。「何々しなきゃダメじゃん! なんでしないの?」なんてとがめる必要は全然ない。そうじゃなくて、もっと工夫してください、というのが私が一番言いたいことです。
(次回は12月31日に公開予定です)
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