若手のうちに知りたい「タクシー券」の使い方 余った券を別の日に使ってはいけません

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ある医療系企業で営業をしているAさんは、セミナーに招待した複数の看護師にタクシーチケットを渡したところ、こんな事件に巻き込まれた。一人の参加者が、セミナーの日は別の参加者のタクシーに同乗し、自分の分のチケットが余ったので、別の日に使用していた。「経理から私の事業部の窓口に指摘が入ったようで、後日そうした使われ方があったことを知らされました。ただ違法ではないので強くは言えなかった。そのお客様には、『今回は大丈夫なんですが、次回からはお願いしますね』とお伝えしました」。

今では、Aさんの会社では、接待でタクシーチケットを渡す時に、「該当日以外で使用しないでください」「自宅と目的地以上で使用しないでください」といったお願いごとを書いた紙を一緒に渡すようになったという。

余ったからと別日に使ったら「マナー違反」

タクシーチケットを本来の目的と異なる使い方をされれば、チケットを渡した担当者もいい気持ちはしないだろうし、それ以降は要注意人物としてマークされるのは確実だろう。また接待時にもらうのは限度額がないタイプのチケットが多いが、「自宅が遠くてタクシー料金がかかるので、自宅まで乗らずに会社までしか乗らないようにしている」(Bさん・42歳)という人もいた。そこまで気を遣う必要はないかもしれないが、節度のある使い方をした方が良いだろう。

以上のようなトラブルは、接待する側がタクシーを呼び、運転手にタクシーチケットを手渡しすれば防ぎやすくなる。こうすればお客様が別の機会に使うことを防げるし、運転手も契約元の担当者と顔を合わせることで不正をしづらくなる。それができない場合は、Aさんの会社のように注意事項をまとめた紙を、チケットと一緒にお客様に渡すのも手だ。

最近では、一括後払い式のチケットがネットオークションで売られているのを見かける。これを使うのは、何の関係もない企業が自分のタクシー料金を払ってくれるのと同じ意味だ。東京都個人タクシー協同組合によれば、「管理責任は契約企業様にあるため、現時点では私どもがこのような利用を制限することはできないが、何らかの防止策がないかどうか弁護士と相談している」という。違法行為ではないにしても倫理的に見れば、使わない方が良さそうだ。

杉山 直隆 オフィス解体新書・代表

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すぎやま なおたか / Naotaka Sugiyama

1975年生まれ。専修大学法学部卒業後、カデナクリエイト入社。ビジネス誌やビジネス書、企業の社内報・PR誌の執筆・編集を主に手がける。2016年に独立(屋号:オフィス解体新書)。社会人インターンシップ情報を紹介するブログメディア「30歳からのインターンシップ」を立ち上げ、取材活動をしている。共著に『課長・部長のための労務管理 問題解決の基本』『図解&事例で学ぶ入社1年目の教科書』『クイズ商売脳の鍛え方』など。

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