キャリアチェンジの「恐怖」を克服する秘訣 38歳シングルマザー起業家の「踏み出す力」

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私は、起業というシフトを経験しましたが、このままで100歳まで生きるとは思っていません。また次のシフトがどこかで来ると思います。今は、変えるべき点を会社から教えてもらっている状態です。起業することと、継続的に事業を発展させていくことは別です。ゼロを1にするための努力と、1から10、あるいは10から100にするときとでは、必要なスキル、求められる役割も異なるでしょう。そんななかで私は経営者としてどこまでできるのか、どこまですべきなのかを模索しています。

気の持ちようで、ゼロをプラスにできる

――危機感を持ちながらも、幸せになることに貪欲なんですね。

端羽 英子(はしば えいこ)/ビザスク代表。1978年熊本県生まれ。東京大学経済学部在学中に結婚。卒業後、ゴールドマン・サックス証券に入社。入社半年で妊娠し1年で退社。USCPA(米国公認会計士)を取得後、日本ロレアルに入社。夫の留学に伴い、家族で渡米。MIT(マサチューセッツ工科大学)でMBA取得。帰国後離婚、以来シングルマザーとして働きながら子どもを育てる。投資ファンドのユニゾン・キャピタルに入社、企業投資を5年間経験後、2012年ビザスクを設立。「世界中の知見をつなぐ」をビジョンに掲げ、知識と経験の流通を変える新しいプラットフォームの構築に日夜奔走している(撮影:梅谷 秀司)

ユニゾン・キャピタルに勤めていた頃より、自分自身の給料もまだ低いのですが、今は何より学ぶ喜びがあります。38歳にもなって、寝るときに「今日も勉強したなあ」と思えるのは幸せなこと。子どもにも、そう言っています。「ママはいま、幸せそうでしょう?」と。そうだね、と言ってくれるので、「私もがんばっているんだから君もがんばれ」と言っています。

私は会社でもよく言うんです。「人から学べないプライドはクソだ!」って(笑)。プライドが高いと、変化を受け入れられる柔軟性を持てないんですよね。つい守りに入ってしまうから。

日本人は「黙して語らず」が美徳のように思われていますよね。「私、シフトするの!」と周りに言う人はあまりいません。奥ゆかしいのかもしれませんが、「失敗したら恥ずかしい」という気持ちも強いのではないでしょうか。でも失敗したかどうかなんて、死ぬときになってみないとわかりません。

私は、死ぬときに、ああ、楽しい人生だった、と言って死にたいんです。多くのことは、気の持ちようでプラスになります。失敗が失敗でなくなるんです。たとえばミーティングが最初の主旨と違った議論になったとしても、「無駄だったね」で終わるのではなく、「こんな議論ができてラッキーだった」と見方を変えてみる。そうすれば、ゼロからプラスになりますよね。あの会議無駄だった、という人には、その会議を「無駄」にしているのは君だ!と言いたい(笑)。

こうしたポジティブな捉え方の日々の小さな積み重ねが、100年ライフを楽しむベースになるのではないでしょうか。

東洋経済新報社 出版局
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