キャリアチェンジの「恐怖」を克服する秘訣 38歳シングルマザー起業家の「踏み出す力」

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――本当にそう思います。恐くはありませんでしたか? よほど周到な準備をしないと、普通の方は恐くてここまで動けないと思うのですが。

準備は、実はあまりしていませんでした。たとえばビザスクも、上司から「君もそろそろ次のステージに進まないと」ということを言われて、はい、じゃあ辞めます、と言って起ち上げました。上司に言わせれば、今の会社でもっとがんばれ、というつもりだったと思いますが、私は、会社を出てしまった。

ウェブサービスで起業したいとは思っていましたが、それに関連する知識はほとんどありませんでした。ビザスクって何語で書かれているの、と聞かれて、「日本語です。英語のサービスなんてまだまだ」と答えてしまったり。プログラミング言語というものがあり、その言語にも複数の種類がある、ということすら知らなかったんです。

もちろん不安がないといえばウソになりますが、新しい経験を積んだ自分のほうが間違いなく価値が上がると考えました。それに、そういう自分のほうが、悶々としている自分より周囲を幸せにできるし、楽しいだろうという気持ちのほうが勝っていたんです。

挑戦こそ最高のリスク対策

――もし20代のときに、本書に出会っていたら、何か得るものはあったでしょうか。

元気をもらえたと思います。私たちの世代では親はまだ保守的で、会社を辞めると言うと、「せっかくいい会社に入ったのにもったいない」とか、子どもができたらできたで、9~17時で終わる仕事に就くべきだ、と言ってきますよね。

実際、最初の会社を1年で辞めたときも、その後、みんなが仕事を覚えて楽しそうに働き始めているのに、自分はそうなっていないことへのあせりがありました。ユニゾン・キャピタルで働いていたときも、長く居続けると人脈もだんだん固定化してくるし、出世は難しいだろうし、この会社で自分はどこまで成長できるのか、悩み続けていました。

もしそんな時期に本書を読んでいたら、そうやって悩んでいろいろなことをするのはいいことなんだ、迷っていること自体が次のシフトに向けた準備であって、実は正解ということもあるんだと気づいて、勇気をもらえたと思います。ピンチだ、と思っていたことが、実はチャンスだったと。

――やはり当時は、「ピンチだ」という意識があったのですね。

人生の収支を合わせようと思うと、100年生きるというのは、結構なホラーストーリーですよ。100年変わらず過ごしていくということはありえないので。ただ、人生においてシフトが、選ぶものではなく、否応なく何度かやってくるものだとすれば、それを受け入れ、危機感を持ちつつもポジティブにとらえて、着実に対応していったほうが楽しいと思います。

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