DeNA「WELQ」騒動、本当の敗者とは誰なのか? 影響を受けたのはメディア業界だけではない

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ネットユーザー:一線を越えたやり方で記事が粗製乱造されるメディアに対しては、一旦楔が打たれた。これを契機にデジタルメディアには、より正確な情報を伝える努力が求められる。それを利用するネットユーザーにとっては、まさに朗報となっただろう。

Losers / 敗者たち

その他キュレーションメディア:キュレーションとリライトは違う。さらに、引用と盗用も異なる行為だ。しかし、この一件で、それらの言葉がすべて怪しい印象に変わった。その余波を受け、サイバーエージェントの「Spotlight」や「by.S」、LINEの「NAVERまとめ」など、キュレーションメディアを標榜するサイトは、一部記事の非公開化など、対応に追われた。

クラウドソーシング事業者:「誰でもメディア」の時代に、誰でもライターになれるクラウドソーシングという業態は、時間のない主婦でも気軽に社会参加できる、一種の理想郷に見えた。しかし、その報酬の低さに、現代の「蟹工船」と一部では揶揄されるようなこともある。すべての案件が、1文字1円に満たないわけではないだろうが、マイナスイメージを払拭する必要はさらに高まった。

グーグル:同社については、これまでも何度も触れた。今回、もっとも大きな失望を買った関係者のひとりだろう。もちろん、Googleのシステムが有用で素晴らしいのは変わらない。しかし、悪貨が良貨を駆逐することもある。この問題は、まさにそれを絵に描いた形となった。

「DeNAパレット」への出稿企業および代理店:関係者の想いは、誰しも「かなり危ういとは感じてはいたが、ここまでひどいとは思わなかった」といったものだろう。しかし、過去は変えられない。成果を求めるのはもちろん理解できるが、支援(スポンサー)する立場として、より適切な場を選ぶことも必要だろう。

あらためてネットユーザー:今回の一件で見えてきたのは、フリーミアムモデルの限界だ。意味のあるコンテンツを提供するにはコストがかかる。しかし、それに対して、広告に頼ったビジネスモデルは、あまりに不安定だ。また、昨年来より問題となっているアドブロック利用者は、増加の一方である。しかし、これ以上、コストを削減することは叶わない。となれば、穴埋めに、利用ユーザーへなんらかの負担を強いる企業も増えてくることも考えられる。

(文:長田 真)

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DIGIDAY[日本版]編集部

2015年9月1日にローンチした「DIGIDAY[日本版]」を運営。同サイトでは米「DIGIDAY」が日々配信する最新のデジタルマーケティング情報をいち早く翻訳して掲載するほか、日本国内の動向についてもオリジナル記事を配信している。メディアジーンが運営

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