日本株を吊り上げている「投機家」の正体 日経平均を短期的に押し上げる勢力がいる

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こうしたファストリ、ファナックといった指数寄与度の高い銘柄が強含む相場展開は、指数先行、とくに先物市場に振らされやすい地合いとなりがちである。この局面では、中小型株が「置いてけぼり」となり、日経平均型の銘柄のみ上昇するといった流れだ。

NT倍率の上昇でわかる「特定の投資家たち」の存在

225銘柄で構成する日経平均と、約2000銘柄のTOPIXのどちらの指数が強いのか判断する材料として、日経平均をTOPIXで割ったNT倍率という指標がある。NT倍率は、11月15日の12.65倍あたりから縮小し12月8日には、12.4倍を割り込んでいた。これは、日経平均よりもTOPIXが強かったことを示している。

このNT倍率が9日の終値ベースで再び12.45倍まで拡大した。物色の流れが変わったと判断することもできよう。つまり、日経平均を引き上げたい投資家が、効率よく指数を引き上げるためファストリなどを利用していると考える。

こうした売買を手掛けるのは、短期的な投資を手掛ける外国人投資家が多い。とくにヘッジファンドの一つであるCTA(コモディティ・トレーディング・アドバイザー)だ。

東証が発表した最新の投資部門別売買高では、外国人投資家は、現物株を4148億円、先物を1999億円買い越している。現物株を中心にしっかりとした買いが観測されていたが、投資部門別売買高はあくまでも発表される前の週の動きをまとめた数値であり、後追い感は否めない。

前述のとおり、9日のメジャーSQという需給イベント通過後に、指数中心の売買を手掛けることは解せないが、今後、一段と短期筋の外国人投資家による指数引き上げの売買が活発化となれば、相場は荒れるだろう。こうした動きは、心理的な節目がしばしば意識されることから1万9500円や2万円という大台で、相場の流れが急変する可能性はある。「上がりすぎ」「そろそろ調整」などをイメージする投資家の心理状態も売りのバイアスを強める要因となろう。

筆者は、来年半ばにかけての中長期的な日経平均及び日本株の上昇を想定している。だが、先週末に物色された銘柄を考慮すると、ここからはCTAなどによる指数先行の乱高下を一段と警戒したい。13~14日に開催されるFOMC(米公開市場委員会)終了後、実質的なクリスマス休暇入りとなりそうな今週は、売買フローの減少も予想される。現物株の商い減少によって、先物の存在感はより増すこととなろう。

田代 昌之 マーケットアナリスト

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たしろ まさゆき / Masayuki Tashiro

北海道出身。中央大学文学部史学科日本史学科卒業。新光証券(現みずほ証券)、シティバンクなどを経てフィスコに入社。先物・オプション、現物株、全体相場や指数の動向を分析し、クイック、ブルームバーグなど各ベンダーへの情報提供のほか、YAHOOファイナンスなどへのコメント提供を経験。経済誌への寄稿も多数。好きな言葉は「政策と需給」。ボラティリティに関する論文でIFTA国際検定テクニカルアナリスト3次資格(MFTA)を取得。2018年にコンプライアンス部長に就任。フィスコグループで仮想通貨事業を手掛ける株式会社フィスコデジタルアセットグループの取締役も務める。

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