「ジプシー」が見つめるヨーロッパ難民危機

「バルカンルート」に漂う難民たち<中編>

前回記事に続き、難民たちの今に迫ります
昨年からヨーロッパに押し寄せた中東などからの難民は、ほぼ同じ経路で欧州に入り込んでいる。“バルカンルート”とも呼ばれるこの経路は、はるか昔にロマ(=ジプシー)が移動に使った道である。
欧州を目指し殺到する中東アジアの人々を前に、現代のロマたちは何を感じているか。欧州難民危機の現状を、ロマとともに“バルカンルート”に追った。

※前回記事:「バルカン流浪の道は「留置場」と化していた」

バルカンルート上にある「ジプシー」の町

マケドニアの首都スコピエ郊外に、シュトオリザリという町がある。町といっても約5万の人口を有し、その9割以上がロマ民族とされる世界最大級のロマ集住都市だ。

マケドニアはバルカン半島の中心部に位置している。南のギリシャと北のセルビアに挟まれ、バルカンルート上から逃れられない国。また首都のスコピエは北側の国境に近く、車で走れば数十分でコソボ、セルビアまで行き着く。

そうした地勢上、旧ユーゴ崩壊の過程で起きた紛争時には、バルカンの国々から大量の難民が流れ込んだ。ことさらコソボ戦争ではシュトオリザリに巨大な難民キャンプが作られ、国境を越えて避難する人々が収容所に収まりきらず、町なかまであふれ出していた。

バルカンルート上にあり、かつて難民に席巻されたシュトオリザリの町は、今回もまた多くの中東難民が押し寄せているのだろうか。

「シリアとかイラクの難民はここに来ないよ。あいつら通り過ぎるだけ。みんなドイツに行くんだろ。マケドニアに用はないさ」

市場で衣料品を売るロマの男がそう教えてくれた。

ロマ特有の長スカートをなびかせる女、馬車を操る男、羊肉ケバブの匂い漂う市場、そうしたアジア的な人の風景は相変わらず顕在だったが、中東難民との接点はこのロマの町にはないようである。

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