「ジプシー」が見つめるヨーロッパ難民危機 「バルカンルート」に漂う難民たち<中編>

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難民たちの必需品は携帯電話。散らばる仲間との情報収集に欠かせない

そして、戦争から逃れる政治難民でも、外国で働きたい経済移民でも、どちらも国を越える移動を「運び屋」に頼った。ボートや車を仕立てて不法な越境を案内する難民ビジネス。ブローカーに少なくないカネを払ってでも“難民”たちはヨーロッパを目指した。

ドイツなどに到達した中には、まだ難民と移民の判別に厳しくなかった時期、カネを使い効率よく移動した"難民"が数多く存在するという。

「シリア人は危険だ、テロリストがいる。俺はドイツに行って仕事したいだけなのになぁ」

すんなり難民認定されたシリア難民への嫉妬心もあるのだろう。バルカンの難民キャンプで足止めされるパキスタン人は、憤りと偏見ついでに、自身が経済移民に過ぎないことをうっかり吐露した。

欧州を目指す“難民”の列には、アフリカをはじめ中東地域以外の人々も多く存在する。さらにはアルバニアやコソボ、セルビアといったバルカンルート上から加わる者も。パスポートを持たず、持っていても偽造だったり。

出身地も民族も別々で、難民と移民と出稼ぎ労働者と、ひょっとしたらテロリストだって混ぜこぜなのが、バルカンルートの“難民”の実態だった。

「流浪の民」の定着の仕方

ロマたちもこの“難民”には含まれている。

ドイツは昨年、難民認定を受けられなかった9万人の難民申請者と非正規滞在者をセルビアに送還した。国際人権団体アムネスティ・インターナショナルの調査では、その多数がロマ民族だったとしている。

ロマとは、西インドを起源とするエスニックマイノリティである。少数民族としてくくられる、ひとつの民族集団。よく「流浪の民」と語られるロマだが、彼らはそのライフスタイルで規定される集団ではない。すでに多くは定住し、移動生活を続ける人たちはまれだ。

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