プリンスホテルに見る、「ホテルマンの仕事」 接客、営業、企画の裏方まですべてこなす

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ホテルで働く人にとって悩みの種は、夜勤だけでなく、休みのタイミングもある。土曜、日曜、祝日はもちろん、お盆に正月といった休日期間は、彼らにとっては繁忙期であり、世間の人たちと同じように休むことが難しい。しかし、役得とも言えるのが、閑散期に休みが取れるので、安くゆったりとした休日を過ごすことができる点だ。「周囲には遊び心あふれる人が多く、上手に旅のプランを立てたり、食べ歩きを趣味にしていて、おいしい店をたくさん知っている人も多くいます。自分の遊びの経験が接客にも生かされる、とても楽しい仕事だと思いました」(白須さん)

営業や企画もホテル会社の大事な仕事

ホテルの現場から本社への異動は「全く別の会社に転職したような変化」だったという  (撮影:梅谷秀司)

ホテルの仕事の醍醐味を感じていた矢先、2年目で白須さんは、東京本社の事業推進部に異動になった。年に1度の人事担当者と総支配人との面談で、「ゆくゆくは東京で仕事がしてみたい」と希望を語ったことは覚えていたが、まさに寝耳に水の異動だった。

ホテル会社には、ホテルでお客様をもてなす仕事だけでなく、どうやってお客を呼ぶか、どうすれば宿泊客に満足してもらえるかを考える、営業や企画といった仕事がある。事業推進部もその一つだ。「全国にある各事業所のホテルの業務について、中長期的な計画を立て、それを実行するための施策を提案する部署です。まったく別の会社に転職したかのような環境の変化でした」(白須さん)。最初の半年は財務諸表の読み方や資料の作り方を覚えるだけで精いっぱいだったという。エクセルやパワーポイントなどのパソコン操作も、このときに覚えたそうだ。

そんな中、月に1回行われる経営会議で競合他社との比較分析資料を作成するという大きな仕事を、部長から「白須君、やってみるか」と振られた。これが自信をつかむきっかけとなった。「それまで課長職の人たちが作っていた資料を半人前の私が作っていいのかと戸惑いました。実際、私が作った下書きを一目見て、『意味がわからない』と突っ返されることもありました。上司の助けもあり、無事に仕事をやり遂げて『これからこの仕事は白須くんに頼むよ』と言われたことは、大きな自信になりました」

本社での勤務形態はホテル業務のシフトとは違い、9時15分から17時30分が勤務時間、土日祝日が休日という、通常の企業と変わらない生活になる。ホテルに勤務していたころの白須さんは、「本社の人たちは楽でいいな」と思っていたという。「ところが、実際に本社勤務をしてみると、定時で働くのもけっこう大変だということがわかりました。特に残業は、ホテルのシフト勤務のころにはなかった概念だったので、戸惑いました」(白須さん)

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