その後、人事担当者との配属面談で希望を聞かれるが、白須さんは迷わず「ベル」を希望した。チェックインを終えたお客様を客室まで案内して部屋の説明をするのがベルの主な仕事だ。お客様を最初にもてなす、いわばホテルの顔とも言える部門に、プリンスホテルに内定が決まったときから興味を持っていたという。
「希望通りにベル担当になれたときは嬉しかったのですが、配属されたのが東京出身の私には縁もゆかりもない広島の事業所(グランドプリンスホテル広島)だと聞いたときは、驚きました。広島の上司からも『なんで東京の人間がウチに来るんだ?』と怪訝そうな顔をされました。『私が聞きたいです』というセリフがのどまで出かかりました(笑)」
ホテルは24時間営業、夜勤は避けられない
プリンスホテルの人事制度には、エリアスタッフとナショナルスタッフの2通りの道がある。前者は1つの地域に密着して働くことになるが、後者は全国の事業所に異動する可能性がある。新卒で入社する半数がナショナルスタッフで、白須さんもその一人だ。
ナショナルスタッフはまず、東京圏にあるプリンスホテルに配属されるのがお決まりのコースだったが、白須さんが入社した頃から、全国のプリンスホテルに配属させるケースが増えた。そうした情報がまだ現場には浸透していなかったのだ。「とはいえ、まったく知らない土地だったからこそ、新鮮な気持ちで働くことができました」(白須さん)
ホテルのスタッフならではの喜びを味わう機会もあった。ある日、弾き語りイベントに出演するミュージシャンの接客を担当した白須さんは、機材を会場に運び込む手伝いをし、感謝の印に自作のCDをプレゼントされた。その感想を本人に伝えたところ、ホテルに心のこもった感謝の返事が送られてきたという。その後、一期一会で終わるはずの出会いが、深い交流につながることの醍醐味を知ったという。
一方、ホテルの仕事は常に宿泊客がいて、24時間稼働。勤務体系もシフト制で、夜勤も多いのが宿命だ。「確かに定期的に深夜から朝10時までの夜勤のシフトがまわってきます。しかし、瀬戸内海がすぐそばにあるので、夜勤明けの爽快感はひとしおです。そのまま泳ぎに行ったこともありますし、中にはその時間から飲みに行く人もいました」と、白須さんは夜勤の仕事を前向きに捉える。
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