記事には一般ユーザーによるものと、編集部がライターに発注して作成した記事の2種類がある。編集部はクラウドソーシングサービスなどを通して集めたライターに、1文字あたり1円にも満たない単価で記事を発注することで記事を量産していたのだ。
DeNAによると、その際に配られるマニュアルやライターへの指示において、他サイトからの転載を推奨しているととらえかねない点があったという。数藤弁護士は「事業の建前上、キュレーションプラットフォームという『場』の運営者だとしても、記事公開に至るまでの編集部の関与の程度によっては、責任が及ぶ場合がある」と指摘する。
メディア事業に関わっていたDeNA社員は「引用の指示は行っていた一方、過度な引用によって丸パクリのようになるのはさすがにまずいという意識を持つ社員は少なからずいた。それを防ぐチェックツールや校閲を活用する動きもあったが、それらがすべてのメディアで厳格に運用されていたとは必ずしも言えない」と明かす。
メディア同士で「配信本数」を競争していた
その裏には、大量の記事を生産することに対するプレッシャーがあったようだ。前述の社員は「記事の発注を行う部隊は配信本数がKPI(重要業績指標)として設定されており、毎日の配信本数はメディア間で競争させられていた。しかも、SEO対策として1本あたりの文字数の基準もある。長文で大量の記事を安く生産するために、一本一本の記事に対するチェックはおろそかになっていた」と事情を話す。
一連の非公開化を行った今も、一件落着とはいかない。事業の中核であるMERYだけはすべての記事の非公開化を行っていないのだ。「MERYは他のサイト群とは運営主体が異なっており、記事の発注プロセス上にも問題は見られなかった」(DeNA広報)というのがその理由だ。
しかし、騒動の前後ですでに大半の記事が非公開化されている。DeNA広報は「規約をより厳密に運用するようにしたため」と説明するが、ほとんどの記事の閲覧が不可能になっており、MERYに出稿している広告主からも怒りの声が上がっている。もはや、MERYはメディアとしての存続に関わるほど価値を毀損している。収益が著しく低下し、事業価値が毀損されたことが確認されれば、買収によって生じたのれんの減損という事態も起こりうる。
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