炎上DeNA、粗悪メディアにとどまらない危機 各社との提携戦略に歪みが生じる可能性も

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今後、守安社長は自らを委員長とする「キュレーション管理委員会」を通じて、記事作成のプロセスや中身の精査をしていく。また、メディア運営のあり方を抜本的に見直し、「自分自身として心の底から自信の持てるプロセスを構築していくことを約束します」としている。

ただ、信頼を取り戻すには途方もない時間を要するだろう。たとえばWELQについて、今後は医学的な根拠に基づく監修を行った後に記事を掲載していくというが、本当に専門家を確保できるのか。

医療専門家による監修の下で医療メディア「MEDLEY」を運営するメドレーの豊田剛一郎代表取締役は、「良い医者ほど忙しく、おカネでは動かない。読者の役に立つ、正確な情報を載せようという強い意志がなければそうした人を巻き込むのは難しい」と語る。

イメージ大幅ダウン、成長戦略にも暗雲

そして、今回の不祥事における影響はひとつの事業にとどまらない。DeNAの成長戦略の根幹には他社との提携がある。DeNAはITベンチャーとしての気質と、プロ野球球団を持つ東証1部上場企業の信用を兼ね備えた企業として、業界の大御所と提携を結んできた。

現在、ゲーム事業では任天堂、自動運転ではヤマト運輸やZMP、遺伝子診断サービスでは東京大学の医科学研究所、AI(人工知能)ではPFNといった企業と提携や共同開発、合弁会社の設立を行っている。今月15日には任天堂とともに開発したスマホゲーム「マリオラン」がリリースされる予定だ。

今回の騒動はネットにおける炎上で終わらず、会社のコンプライアンス問題にまで発展した。信用の毀損によって提携関係にひずみが生じれば、DeNAの成長戦略にも長期にわたって影を落とすことになる。

渡辺 拓未 東洋経済 記者

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わたなべ たくみ / Takumi Watanabe

1991年生まれ、2010年京都大学経済学部入学。2014年に東洋経済新報社へ入社。2016年4月から証券部で投資雑誌『四季報プロ500』の編集に。精密機械・電子部品担当を経て、現在はゲーム業界を担当。

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