その後はiemoのCEOである村田マリ氏指揮のもと、次々にキュレーションサイトを展開。DeNAのキュレーション事業は合計10媒体を運営する事業体となった。SEO(検索エンジン最適化)技術を駆使し、大量の記事をグーグル検索の上位に配置することでユーザー数を拡大した。
事業は順調に成長し、2015年度の第2四半期時点では5億円に満たなかった事業売上高は、2016年度の第2四半期には約15億円と3倍以上になった。
現在、売り上げの過半を「MERY」が稼いでいるが、生え抜きメディアの中で頭角を現していたのが、医療情報サイト「WELQ(ウェルク)」だ。WELQは2015年10月に設立されて以来、健康情報の高いニーズを受けて急速に拡大、調査会社ニールセンによると、2016年6月には631万人もの利用者数を集めるまでに成長していた。
今回、サイトが非公開化に追い込まれたきっかけは、WELQ上で医学的に信憑性が疑わしい内容の記事が存在し、しかもそれがグーグルのキーワード検索結果の中でも上位に位置することに対する指摘が相次いだことだ。実際、そうした記事は専門家による監修を受けずに公開されていた。この問題を受け、11月29日にWELQは他のメディアに先立ち非公開化された。
問題はWELQだけではなかった
ただし、非公開化は最終的にMERYを除くほとんどのメディアに及んだ。これは他サイトからの無断転用が数多く存在していたからだ。ある医療関係者は「WELQの記事には、ほぼすべてを自分が書いた文章の引用で構成されているものもあった」と眉をひそめる。
著作権法に詳しい数藤雅彦弁護士は「単に出所を明示するだけでは不十分だ」と話す。数藤氏によると、引用が成立するかを決める基準のうち、「明瞭区別性」と「主従関係」が重要になるという。
明瞭区別性とは引用箇所をかぎ括弧で囲むなどして、本文と明確に区別できること。主従関係は作者の文章が主体で、引用部分はそれを補助する関係にあることを指す。どこまでが引用かわからないもの、大半が引用で構成されている記事の場合は適法とは言えないという。
キュレーションサイトは、自由にまとめを作れるため、著作権上不適切なものが掲載されることは構造的にありうる。DeNA側はプラットフォームの運営者として、不適切な記事が見つかり次第削除するという対処を行ってきた。だが、今回は記事製作の過程で編集部の関与が浮上している。
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