アマゾンが始めた「白いトラック事業」の正体 45フィートコンテナで何を運ぶのか

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45フィートコンテナを運ぶ新事業「AWS Snowmobile」とは?

世界最大のショッピングサイトであるアマゾン・ドット・コム。同社の収益柱は、実は「本業」のショッピング部門ではない。もっとも利益を稼いでいるのは、2006年に開始したクラウドコンピューティングサービス「アマゾン・ウェブ・サービス(AWS)」だ。

2016年7~9月期におけるアマゾンの全売上高327億ドルに占めるAWSの比率は約1割の32億ドルと大きくない。しかし、セグメント利益ということでは全社利益5億7500万ドルを超える8億6100万ドルにおよぶ。内部取引(=ショッピング部門への売り上げ)から得られる利益も大きいと推測できるが、同社の最大セグメントである北米部門のセグメント利益6億9400万ドルも上回っており、屋台骨を支える最大の利益柱といっていい。

シェアは45%、年率60%で成長

クラウドコンピューティング市場における世界シェアも圧倒的だ。シナジーリサーチグループの調査によると、AWSは多くの顧客が共同で使用するパブリッククラウド領域で45%以上のシェアを誇り、2~4位(グーグル、マイクロソフト、IBMの3社)を合わせたよりも大きい。客層は幅広く、Airbnb、Pinterestなどの有名スタートアップ企業はもちろんのこと、大企業、政府機関、地方公共団体などにも浸透している。

AWSの躍進を示す数字をもう少しみておこう。AWSは年率約60%のペースで成長を続けており、2016年暦年の売り上げは約1.5兆円(130億ドル)になる見通しだ(1~9月では87億ドル)。急成長の結果、今ではAWSのユーザー数は世界190カ国以上・200万以上を数える。

米ラスベガスで毎年行う年次イベント「re:Invent」は年を追うごとに規模を拡大。参加する開発者・ユーザーなどの数は2012年の6000人から9000人、1万3500人、1万9000人と増加を続け、今年11月30~12月1日のイベントでは3万2000人を超えた

「多くのIT専業企業と比較しても、これだけ高い成長を続けている企業はない」。AWS部門のアンディ・ジャシーCEOは11月30日に米ラスベガスで行われた年次イベント「re:Invent」の基調講演でこう胸を張った。

初期費用を抑えて、素早く新サービスを開始できる点がクラウドサービスの大きな利点。そのため、競争力向上を目指す企業にとって「クラウド業者との付き合い方」は最重要ともいえる経営課題になっている。

そうした中で、アマゾンが独走できた理由は、価格の低廉さ、メニューの豊富さもさることながら、クラウド上で動かすアプリケーションなどを自社技術で囲い込むことを極力避け、顧客が自由に選択できるようにしている点だろう。

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