アマゾンが始めた「白いトラック事業」の正体 45フィートコンテナで何を運ぶのか
また、顧客の声を積極的に聞く点も、AWSの特徴だ。顧客の要望をもとにした機能追加を毎日のように行っており、「今年1年だけで1000近い機能追加を行った」(ジャシーCEO)。そのことが、グーグル、マイクロソフト、IBMなどの追随を許さない評価と実績を獲得することに繋がった。
クラウドと聞くと、真っ先に「コスト削減」をイメージしがちだが、重要なポイントは、これまでは莫大な投資が必要だったデータ処理や新事業を安価にできるようになったこと。コスト削減ももちろん重要だが、「成長に向けたアクションを起こしやすくなること」のほうが、クラウド移行の本質的な果実といえる。
膨大なデータを45フィートコンテナで移動
今や、クラウドへの移行の規模はきわめて大きく、しかも「根こそぎ」だ。そのことを示した象徴的なサービスが、11月30日に明らかにした「AWS Snowmobile」だ。
これは45フィートコンテナを活用してエクサバイト級(10億ギガバイト)の巨大データを数週間でクラウドへ移行するサービス。1台のコンテナに搭載できるデータ容量は100ペタバイト(1億ギガバイト)。1エクサバイトのデータを持っている大企業であれば、10往復ですべてのデータを持ち運べるわけだ。
米国の一部地域で限定して行うサービスだが、すでに顧客の見込みがあるという。巨大データを持つような大企業、研究所などのクラウドへの移行がいよいよ本格化しているのである。
まさに、クラウドにおける主役企業に躍り出たアマゾン。それでも冷静に考えれば、やはりアマゾンの「本業(祖業)」はインターネットを通じたショッピング事業だ。それゆえに専業の競合他社は「本業の片手間でITをやっているような会社に御社の未来を任せていいのですか」という”セールストーク”を語ることがあるようだ。
少し古いインタビューだが、マイクロソフトの前CEOであるスティーブ・バルマー氏はインタビューで「アマゾンは優秀な会社だが、基本的に彼らはリテーラー。ハイテク業界の中核企業となる使命があるのかどうかわからない」と語っていた。競合他社のアマゾンに対する偏見は、今でも大きく変わってはいない。
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