アマゾンが始めた「白いトラック事業」の正体 45フィートコンテナで何を運ぶのか

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しかし、それはもはや負け惜しみにすぎないだろう。「アマゾンは顧客が望むサービスを長期的視点に立って提供しており、片手間でやっているはずがない。そもそもアマゾンは創業した最初の1日からテクノロジーの会社。アマゾンの文化だからこそ生まれたのがAWSだと思う」(AWS日本法人の長崎忠雄社長)。

ただし、本業であるショッピング事業とAWSでは、顧客ターゲットもビジネスモデルもまったく違うのは事実。冒頭に触れたように利益規模では、ショッピング事業を凌駕するような勢いだ。

AWSがこれまでのように成長を続ければ、その差はさらに開いていくはずだ。「AWSであがった利益をきちんとAWSへの再投資と値下げ原資に回してくれるのか。ショッピング事業に流用されてしまうのではないか」という懸念を顧客が持つことは、想像に難くない。企業分割して別会社としたほうが、株主にとっても顧客にとっても明快で分かりやすいだろう。

また、アマゾンのライバル企業(たとえばウォルマートや楽天など)は、積極的にAWSにデータを預けたいとは思わないだろう。いずれは、そこが成長の障害になるかもしれない。ただ、すでにビデオ配信事業でアマゾンとガチンコの関係にあるネットフリックスがAWSにすべてのデータを移行した実績もある。「競合だから取引を避ける」という考え方は、すでに古いのかもしれない。

とはいえ、企業分割は重要な検討課題といえるだろう。

「日本のユーザーはテクノロジーの価値に敏感」

AWS日本法人の長崎忠雄社長

AWSの日本における顧客数や売り上げ数字は明らかにされていないが、好調に推移しているようだ。

「SAPなどのERP(統合業務システム)の稼働実績が豊富。日本のユーザーはテクノロジーの価値に対して敏感で、大企業からスタートアップまで幅広い顧客がいる」(長崎社長)。2011年にいち早く日本国内(大阪)にデータセンター拠点を置いたこと、NEC、NTTデータなどがパートナー契約を結んでおり、そうしたパートナーと取引のある大企業が安心してAWSを選択できるようになったことも好調の理由だろう。

ただし、日本でも世界でも、クラウド市場の急成長は、まだまだ続く。グーグルのような競合他社にアマゾンが勝ち続けるための戦略は何なのだろうか。

「世界でもっとも顧客を中心に考えるIT企業になること。お題目に聞こえるかもしれないが、本当に顧客の利益を考えている企業は多くはない」(ヴァーナー・ボーガスCTO)。アマゾンの創業以来の理念である「顧客中心主義」という言葉を何度も何度も繰り返した。

実際、IT業界では顧客中心主義とはほど遠い「ベンダーロックイン(他社サービスへ乗り換えしにくくすること)」を推進することこそが王道であった時代が長かった。お題目のように聞こえる「顧客中心主義」は、この業界では意外と侮れない強みなのかもしれない。

山田 俊浩 東洋経済 記者

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やまだ としひろ / Toshihiro Yamada

早稲田大学政治経済学部政治学科卒。東洋経済新報社に入り1995年から記者。竹中プログラムに揺れる金融業界を担当したこともあるが、ほとんどの期間を『週刊東洋経済』の編集者、IT・ネットまわりの現場記者として過ごしてきた。2013年10月からニュース編集長。2014年7月から2018年11月まで東洋経済オンライン編集長。2019年1月から2020年9月まで週刊東洋経済編集長。2020年10月から会社四季報センター長。2000年に唯一の著書『孫正義の将来』(東洋経済新報社)を書いたことがある。早く次の作品を書きたい、と構想を練るもののまだ書けないまま。趣味はオーボエ(都民交響楽団所属)。

 

 

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