加工食品の「原産地表示」義務は大混乱を招く ハムなら「豚肉(アメリカ又は国産)」でもOK?

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では、消費者や生産者にとって、これから食品表示の変更はどんな影響を及ぼすのか。

現状で、加工食品に原料の原産地表示が書かれているのは、店頭の1~2割。これが全品となる。表示方法については、例外表示が過半数を占めることになるだろう。特に多くなると見込まれるのは、④の製造地表示だ。

パンの小麦粉、菓子の砂糖、植物油などがそう。たとえばパンは「小麦粉(国内製造)」などと表示されても、製造されたのが国内であり、小麦そのものが国産かどうかは不明である。

消費者からすれば、ハムに「豚肉(国産又は輸入)」と表示されていたら、「原産地を隠しているのではないか」と思うかもしれない。実際にはメーカーが一定の品質を保つため、国産やさまざまな国の原料を取り寄せるため、こうとしか表示できないケースもある。こんな表示義務化が本当に必要なのかと、検討会では、事業者団体や一部の消費者団体から、強い反対意見が出された。

食品表示全体の信頼が損なわれる

ならば生産者にメリットはあるのか。そもそもの目的であった、TPP対策としての国内農業強化には、期待できるのか。

原則の国別表示が増えれば、国産の表示を選ぶ消費者は増えるかもしれない。しかし、例外の可能性表示であれば、国産を選びたい消費者のニーズにはかなわないし、国内製造の製造地表示を国産かと誤解する人もいるかもしれない。検討会の途中では、本来は支持するはずの生産者団体の委員からも、一部で懸念する声が上がったほどだ。

むしろ、国産原料の利用促進どころか、逆に国産原料を利用する機会が失われる、という意見すら出ている。検討会の座長も記者会見で「TPP対策から見たら、成果としては、大きなアドバンテージにはならないのではないか。ルールができたからといって、国産が増えるかはわからない」と述べた。国内農業の強化策としては期待できそうにない。

結局は誰のための表示かわからないまま、全ての加工食品にあいまいな例外表示が拡大していく。消費者の選択のための表示なのに、その目的が果たされないどころか、誤認が広がる恐れもある。これでは食品表示全体の信頼が損なわれてしまう。基準改正の前にもっと丁寧に考え直すことはできないのだろうか。

森田 満樹 消費生活コンサルタント

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もりた まき / Maki Morita

九州大学農学部卒業後、食品会社研究所や業界誌、民間調査会社を経て、2011年3月に一般社団法人「Food Communication Compass(Foocom)」を設立。 消費生活コンサルタント、ライターも。 著書に『新しい食品表示がわかる本』(女子栄養大学出版部)など。

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