加工食品の「原産地表示」義務は大混乱を招く

ハムなら「豚肉(アメリカ又は国産)」でもOK?

可能性表示は、原料の原産地の可能性のある国を「又は」でつないで列挙する。3か国以上になる場合は、3か国目以降は「その他」でもよく、「豚肉(アメリカ又は国産又はその他)」などと表示する。過去の使用実績などをもとに表示されるが、国産と書かれていても、実際に手に取った商品に国産原料が使われているとは限らない。

大括り表示は、輸入原料の調達先が3か国以上の場合、「輸入」と大きく括って表示する。「豚肉(輸入)」と表示され、国産を使っていないことはわかるが、外国のどの国かはわからない。

可能性表示+大括り表示は、①と②をあわせて表示する。「豚肉(国産又は輸入)」か「豚肉(輸入又は国産)」と、過去の使用実績などで使われる可能性の多い方を先に書くが、実際にその商品で国産が使われているとは限らない。

製造地表示は、原料が加工品の場合、原産地表示の代わりに製造地を表示する。「〇〇製造」と書く。たとえば、アメリカから豚肉を輸入し国内で味付けて原料としたら、「味付け豚肉(国内製造)」と表示できるが、原料そのものが国産だと誤解しかねない。

TPPの容認と引き替えに決まった?

特に混乱しそうなのが、①と③の可能性表示で使われる「又は」だ。これは「、(てん)」で区切られている表示とは意味が違う。「国産、輸入」とは、国産と輸入の原料の両方が入っていることを意味するが、「国産又は輸入」では両方入っているとは限らない。

ではなぜ、こんなにわかりにくい例外表示を、あえて導入することになったのか。話は1年前に遡る。

当時、環太平洋経済連携協定(TPP)の大筋合意を受けて、自民党農林部会は、国内農業の強化対策として加工品の原料原産地表示を拡大することを決めた。表示を義務付ければ、消費者は「国産」原料である農産品を使った商品を選ぶ、と考えたわけだ。国産品をアピールしたい農家はこれに乗った。今年6月には閣議決定で全加工食品を対象にすることが正式に決定。いわば国内農業対策のための”バーター”であり、政治的な取引の産物とも言える。

それにしても「全加工食品」とは無理がある。日本は食料自給率が4割しかなく、多くの加工食品は一定の価格と品質を保つため、複数の国から原料を調達している。夏はA国、秋はB国と、収穫時期に応じて調達先は切り替わり、複数の国をブレンドして使うこともある。こうした調達パターンに応じて、国名を表示した複数のパッケージをあらかじめ印刷しておくことも可能だが、現実的ではない。メーカーにとってはコストがかかるし、もちろん環境にも優しくない。

国の検討会では、どう表示すればいいかを検討。食品メーカーにもヒアリングを行い、これならばできるという実行可能な方策として示したのが、4つの例外表示である。この取りまとめをうけて、消費者庁は2017年夏には食品表示基準の改正を行う予定だという(移行期間は未定)。

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