「バニラ」と「ピーチ」、日の丸LCCは真逆を行く 同じANAが出資する2社はこんなに違う!
井上氏は言う。「(バリュー)アライアンスには8社入っていますよね。戦略、オペレーション、営業など、定例の会議が1つや2つじゃないはず。出張費など、どれだけの間接コストがかかるか。われわれが時間とおカネをかけるべきものは、ほかに山ほどある」。
愚直なまでにLCCの「教科書」通りに戦略を描くのがピーチだ。同社の「先生」は世界のLCCの先駆であるアイルランドのライアンエアー。実際、事業を立ち上げるにあたって同社の元会長をアドバイザーに迎えたほどだ。
徹底してLCCモデルを追求するピーチ
ライアンエアーは欧州域内に70を超える「拠点空港」を持つ。ここには自社の飛行機を駐機させ、乗員が待機する。拠点空港を中心に同心円状に路線網を張り、短距離を1日に何回も往復することによって機体の稼働を高め、低運賃でも利益を生み出す。「こうしたライアンエアーのモデルを追いかけている」(井上氏)。
そんなピーチは11月18日、航空機製造大手のエアバスと短距離機の「A320」シリーズ計13機の購入契約を結んだことを発表した。現在18機の機体で運航するピーチは、2020年には今の倍となる35機前後の体制を目指している。
井上氏はさらに先を見据える。「3年連続で黒字化を達成し、累積損失も解消した。ようやく普通の会社になれた。今後は100機体制を目指す。とにかく規模が重要だ」。ライアンエアーや米サウスウエスト航空といった世界の大手LCCは100機以上の運航体制を築いている。井上氏は100機体制の時期について「なるべく早く」とした。
今回ピーチが購入するうちの10機は「A320neo」という最新のエンジンを積んだ派生機種だ。従来のA320より航続距離が長くなり、片道5時間前後の飛行も可能だという。ただあくまでも教科書をなぞるがごとく、「低運賃のLCCで中長距離路線は商売にならない」(井上氏)というスタンスだ。
一方のバニラ。こちらも現在運航する機体はすべてA320だ。現行機は2018年に生産終了となるので、新たな機体を確保しなければならない。五島社長は「A320neoなのか、それ以外の機体を導入するのか。より長距離を飛べる機体もオプションにある」と説明する。
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