TBCが「求人詐欺」の撲滅に乗り出した理由

エステ業界の「ブラック体質」は改善するのか

 ――見せかけの高収入を謳う「求人詐欺」が放置されると、誠実に条件を出している企業が求職者から選ばれなくなってくるという、不健全な状態が発生する。

その通り。どうしても求職者は仕事を探すとき、求人サイトで「給料○○円以上」と検索をする。そこでピックアップされるのは、固定残業代を内包したいわば「水増し求人」ということになる。こうした形で、新興の「脱毛サロン」との人材獲得競争が、歪んだ形で進んでいってしまっているのが現実だろう。

――今年の4月には若者雇用促進法が改正され、新たに基本給の額・固定残業代の計算方法を明示することを義務づけられた。

われわれは、法律で出さなければならないとされているものを「リクナビ」などの求人サイトに全て明記している。現在では、固定残業代を3万円とした上で、その時間数と計算方法を書いてある。超過した分の差額計算も、これならすぐできる。

4月から法律が施行されたのだから当然だ。ところがエステユニオンからは「他社はやっていない」と聞かされた。そこで、求人サイト側に、どうしてこうしたことが起きるのか尋ねたところ、「自主規制という扱いにしている」とのことだった。あくまで法律なので、自主規制という話はおかしいと主張したのだが……。

継続的に働いてもらいたい

――若者雇用促進法には罰則がないため、機能しないことが以前から懸念されていた。

強制力がないため、今も固定残業代の正確な情報を出してないところは多いようだ。しかし、だからといって、うちも出すのやめるということでは、エステ業界の労働市場がいつまでたっても機能しない。TBCグループはエステティシャンで成り立っている会社だ。まず彼女たちに安定して継続して勤めてもらうことを最優先に考えている。それが、会社としても合理的だ。

採用からのコストまで含めると、新卒の研修をやるだけで、店舗に出す前に1人約100万円かかる。何もしなければ辞めてしまうはずだった従業員が100人残ってくれれば、システム導入コストを差し引いても十分にプラスになる。

8月26日に会見を行うTBCグループとエステユニオンの代表者。右端がTBCグループの執行役員人事総務部長の長南進亮氏

――8月にエステユニオンとの間で締結した「ホワイト求人協約」は、若者雇用促進法で定められた事項も含まれている。

求人時に残業代の計算方法や基本給の額などを明示することに加え、求人情報で示した労働条件を下回る労働契約は結ばないこと、離職者数や育休の取得者数といった情報を公開する、といった内容になっている。「TBCは法律どおり情報を出しています」と発信しても、それは当たり前の話になってしまうため、他の形で一歩踏み込んだことができないか、ということを検討した。

そうした中、エステユニオンから提案をもらい、双方の議論を経て「ホワイト求人協約」ができあがった。エステ業界を志す若い人が安心して働けるように、業界大手であるTBCは、求職者に必要な情報を率先して提供すべきだと考えている。

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