TBCが「求人詐欺」の撲滅に乗り出した理由 エステ業界の「ブラック体質」は改善するのか

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――TBCに対しては、労働基準監督署が今年3月に休憩の未取得、残業代の不払いといった労働基準法違反について是正勧告を出していた。状況は改善しているのか。

かつては、本社が現場のことを把握しきれず、さまざまな問題があったことは事実。営業時間終了後も勤務時間は多少残っており、100%とは言わないまでも残業の申請があったため、本社としてはちゃんと時間外が付いているという認識だった。しかし、店舗によっては営業時間終了後の報告会が終われば全員帰るところもある一方、残業を続けなければ業務が追いつかないスタッフがいたところもあった。

お客様のいる時間に休憩を取ることについても、問題があった。サービス業という性質上、例えば電話が鳴っても「取りません」というわけにはいかない。お客様が来店された際に、「休憩中なので対応しません」ということも、なかなか難しい。人数が少ないと、そうしたフォローが難しく、対応が現場任せになってしまっていた。また、若い人はそうでもないが、ベテランには時間外で働くことを厭わないという意識が強い面もあり、それが風土として広がってしまっていた面もあったようだ。現在では、ユニオンから現場の情報をもらったり、社内でもアンケートを取ったりして、状況の把握を怠らないようにしている。

ホワイト求人労働協約のポイントをまとめたパンフレット

――現場の人手が足りなければ、結局、休憩の未取得や残業代未払いということにならないか。求人の時点でいくらよいことを言っても、絵に描いた餅になっては意味がない。

特に都心部の大型店は非常に忙しいため、仕事を明確に分けて適切な人材を追加採用することで解決する方針だ。店舗でベッドメーキングや洗濯などを行うクリーンスタッフについて、50代も対象にして募集をかけたが、元社員を中心にかなり反響があった。これまでは、そうした業務も既存のスタッフが行っていた。

専属スタッフがいれば、彼らは本来のエステ業務に集中することができる。先々は、別会社を作り、エステティシャンが定年後に行う職種としてクリーンスタッフ業務を確立できる環境になれば、と考えている。

――業務を分けて人を増やせば、労務費は上がるが、ビジネスを継続することに影響はないのか。

「100円脱毛」などを行っている脱毛専門サロンであれば、難しいだろう。TBCでもキャンペーンとしてやったことがあるが、人件費を考えると、確実にペイしない。現在、われわれがやっているサービスは、1時間で2万円という高単価なものも多い。また、デジタル広告などを活用して広告宣伝費を削減する余地もまだある。増員によって人件費が増加する分については、必要コストとして考えていくことができるはずだ。

関田 真也 東洋経済オンライン編集部

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せきた しんや / Shinya Sekita

慶應義塾大学法学部法律学科卒、一橋大学法科大学院修了。2015年より東洋経済オンライン編集部。2018年弁護士登録(東京弁護士会)

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