TBCが「求人詐欺」の撲滅に乗り出した理由 エステ業界の「ブラック体質」は改善するのか

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TBCグループは、「ホワイト求人」に乗り出している
実際の労働実態と大きく食い違う条件を示して求人を行うことを「求人詐欺」という。これが一般的なものになってしまっているのが美容・痩身などの施術を行うエステ業界だ。
1対1の接客が必要で、従業員の業務は当日の来客数に大きく左右される。来客数が多い店舗であれば、必然的に従業員の業務量は膨らむ。こうした過酷な職場環境であるがゆえに、離職率は高い。慢性的な人手不足で、業界各社は目先の人材確保に躍起になっている。そのため、求人詐欺が頻発しているのだ。
こうした状態を改善しようと、業界大手のTBCグループ(東京都新宿区)は、8月26日に労働組合のエステ・ユニオンと「ホワイト求人労働協約」を結んだ。労働協約とは、労働者が組織する労働組合と使用者との間で締結された労働条件などに関する合意のことで、この基準に反する労働契約を無効とする効力がある。
企業がこうした協約を外部の労働組合と率先して結ぶことは異例だ。なぜこのような決断をしたのか。TBCグループの執行役員人事総務部長の長南進亮氏に話を聞いた。 

 

――エステ業界は、労働環境が厳しいとのイメージが強い。これまでもいくつもの会社で、労働基準法違反を伝える報道があった。

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業界の構造として問題があったことは否定できない。まず、5~6年前から、人材不足が本当に深刻になっていることが原因の根幹にある。求職者には、通常の事務職、オフィスワークのほうが人気のため、サービス業は「滑り止め」という感覚が強い。わが社でも、以前に比べて現場の従業員数が不足しており、特に若い人の数が少なくなってしまっている。

そうした中、エステとは異なる「脱毛専門サロン」という業態が出てきて、労働市場環境の問題が大きくなってきた。「脱毛専門」を掲げる会社は、一見すると求人でとてもよい条件を出している。初任給で25万円というところもあり、どうしても求職者は流されてしまい、我々としても人材獲得がさらに難しくなってきた。

「固定残業代含む」に潜む問題

――しかし、それは「固定残業代含む」という形にして、その他の残業代が未払いであるところが多いことが実態。求人段階では魅力的な条件を掲げて人を集めておきながら、実際の労働環境が事前の情報と異なり劣悪という、不意打ちのような手法が蔓延している。

うちは、もともと固定残業代を入れていなかったため、かつて1番安い地域で16万円台の求人もあったが、大手という安心感もあり、それでもたくさんの応募があった。しかし、固定残業代を含む求人広告を出しているところには、まったく対抗できなくなってしまった。最近では固定残業代を含むことで、初任給で21万円ほどになってきているが、この方向を続けてもいたちごっこのような状態になる。

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