ついにバブル崩壊 “ショッピングセンターの申し子たち”の落日
千葉県北部、北総鉄道の印西牧の原駅を降りると、巨大な観覧車が目に飛び込む。ショッピングセンター(SC)「BIGHOPガーデンモール印西」。敷地面積は15・7万平方メートル、「バリューモール」と銘打ったゾーンには、衣料ブランドのアウトレットや雑貨店、ボウリング場やカラオケ店といった非物販のテナントまでそろっている。
開業は昨年9月。まだ1年も経過していないが、一歩足を踏み入れるや、すぐにその“異変”に気づく。
SCバブルは崩壊 倒産予備軍はゴロゴロ
「当店は誠に勝手ながら閉店とさせて頂きます。お客様には多大なご迷惑をお掛けいたしまして誠に申し訳ございません」
SCの「駅前ゾーン」の店先には、こんな張り紙が掛かっていた。駅に程近い同ゾーンは、いわばSCの顔。にもかかわらず、開業当初から入居のなかった区画も含め、全19区画のうち約6区画が空いたままだ。他のゾーンでも空き区画が所々に散見される。
このSCを開発・運営するのは、大阪に本社を置くミキシング。同社は先月16日、大阪地裁に民事再生法の適用を申請した。資本金5300万円の企業だが、負債総額は約186億円に上る。同社は、商業施設の企画・コンサルから開発へ事業領域を拡大してきたが、不動産市場の低迷で開発物件の売却が進まず、資金繰りが急速に悪化した。同社をよく知る業界関係者は、「再開発物件では他社より6~8割高い値段で入札することもあった。明らかに過剰計画だった」と真相を明かす。
だが、苦境に陥っているのは同社だけではない。複数の業界関係者は「SCごとに別会社化しているケースも多く、デベロッパーには倒産予備軍がたくさんいる」と口をそろえる。SCは2000年代に入り、小売業の新規出店の大舞台となった“花形”業態。そのSCがついに、大きな曲がり角に差し掛かった。
つい最近まで、業界は「SCバブル」に沸いていた。そもそものきっかけは、00年に実施された規制緩和。環境規制を主眼とする大規模小売店舗立地法(大店立地法)の下で、一定の基準を満たせば原則出店が自由になった。特に広い敷地を確保できる郊外で、SC開発が集中。開業数自体は法改正に伴う駆け込み出店が集中した00年がピークだが、大型化によって、売り場面積は右肩上がりに増えていった。
SCを開発するデベロッパーにはさまざまな種類がある。不動産会社はもちろん、小売りが自らSCを開発し、そのキーテナントとして入居するケースも多い。代表格がイオングループだ。業界のもう一角、セブン&アイ・ホールディングスも、遅ればせながら「アリオ」ブランドでSC開発を進めている。
そして近年主流になっているのが、投資ファンドがSCを開発するケース。日本でSCを手掛けるファンドは、大小300近くに及ぶといわれる。証券化など投資スキームが整備されたこともあり、カネ余りを背景に、大量の資金がSC開発に流れ込んだ。しかし、ここに来て、そのバブルは完全にはじけた。