「ブロックチェーンで世界一」という巨大野望 急拡大するビットコインの今とこれから

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加納 裕三(かのう ゆうぞう)/1976年生まれ。2001年東京大学大学院工学系研究科修了後、米ゴールドマン・サックス証券にてエンジニアとして自社決済システムの開発に携わる。BNPパリバ証券を経て、2007年ゴールドマン・サックス証券に再入社、デリバティブ・転換社債トレーダーとして勤務。2014年1月に仮想通貨を取引するビットフライヤーを起業。仮想通貨の業界団体「日本ブロックチェーン協会」の代表も務める

加納:ですが、創業時がピークでした(笑)。

塩野:すぐにビットコインの世界において取引高シェアの80%を握っていたというマウント・ゴックスによるビットコイン消失事件が起こりましたね。マルク・カルプレス社長の説明は虚偽で、結局は逮捕された。

加納:事件が起きて、終わったなと思ったんです。当時は「ビットコイン悪者説」があって、仮想通貨に対する信頼が大きく揺らぎました。ただ、僕なりに調べてみても、当時言われていた取引の脆弱性(トランザンクション展性)による消失である確率はかなり低いと思っていまいた。

塩野:結果的には社長個人の横領という決着でしたね。

加納:まだ判決がでていませんが。ビットコインの仕組みが駄目でないと確信があったので、暴落した時にしこたま買ったんです。

塩野:さすがトレーダーですね。ビットフライヤーという会社はどんなビジネスモデルなんでしょう。

加納:ビットコインの販売所と取引所の運営です。最初は取引所を作ったのですが、日本はビットコインの流動性を供給する主体がないので、自分たちがリスクをとる形で販売所を先にリリースしました。

塩野:取引所と、マーケットメイクする販売所の両方を作ったということですね。

加納:創業から2年は鳴かず飛ばずでしたが、2015年の冬から取引のボリュームが盛り上がってきました。

ビットコインの信頼が回復

塩野:仮想通貨を規制した改正資金決済法が今年の5月に可決されて、来年6月3日までに施行されますね。

加納:ビットコインなどの仮想通貨を支える技術であるブロックチェーン・テクノロジーを元に、大手金融機関向けの金融基盤アプリケーションを開発するR3というスタートアップがニューヨークに生まれました。共通のインターフェースができて、大手の外資金融がみんな乗っかってきて潮目が変わりました。ビットコインが再評価され、事件についてはマウント・ゴックス社長による犯罪とわかったことで、信頼も回復しました。

役所や政府がビットコインの可能性を論じ出していますし、メディア露出も増えてきて、そこからは右肩上がりですね。

塩野:新しいテクノロジーを元にした世界に移ったわけですが、加納さんにとってはその選択肢は自然なものだったんでしょうか。

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