40~50代に多い介護離職を避けるための知恵 介護保険や介護休業の基本を知っていますか

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このほか、介護のための勤務時間の短縮等の措置があります。これは、対象家族1人につき、介護休業をした日数と合わせて少なくとも93日間利用可能な勤務時間の短縮等の措置です。具体的には、勤務時間の短縮や始業・終業時刻の繰り上げ・繰り下げ、余力のある企業では、社員が利用する介護サービスの費用の助成等が対象措置として挙げられます。

日頃から情報を集めておこう

すでに家族介護を経験した人は日本中にごまんといます。家族介護の先輩であれば、初めて家族介護する人の悩みに共感し、大変さを理解してくれます。そして、自分の精神状態を保つ方法や良い意味で介護の手を抜く方法などの知恵を持っているかもしれません。

そのような家族介護者が集まる私的な交流会が全国で開催されています。介護保険が利用できるとはいえ、決して家族の苦労がなくなるわけではありません。親を怒ってしまった自分と同じシチュエーションの話を聞くと、自分だけではない、みんなそうかと安心ができます。そして、人の話を聞くことで自分自身を俯瞰的に見られるかもしれません。また、多少愚痴をこぼしても責められることもありません。普段胸にしまっている言葉を外に吐き出すことで、すっきりできることもあります。

お住まいの市町村や地域の社会福祉協議会などで家族介護者向けのイベントを開催しています。それらのイベントでは、地域で利用できる社会資源情報(福祉タクシーや成年後見制度、施設情報など)を集めることができます。意外と地域にはお宝資源が眠っています。

2017年4月以降は、地域包括ケアシステム(高齢者を地域で支えるシステム)が本格的に始まります。これから起こりうるであろう両親の介護問題であたふたしないように、日頃から地域の情報を集め、両親とともに催しに参加してみるなど、備えておいても損はありません。

藤尾 智之 介護福祉経営士・税理士

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ふじお ともゆき / Tomoyuki Fujio

東京都出身。法政大学経済学部卒業。特別養護老人ホームで事務長として働いていた時に相続ならぬ「争族」を目の当たりにし、なんとかしたいとの思いから税理士を目指す。現在は老人ホーム事務長時代の経験や日頃の介護勉強会等で得た情報を活用して、介護施設の経営支援を行う。その他、シェアーズカフェオンラインやヨミウリオンラインへ寄稿している。趣味は息子とのキャッチボール。

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