40~50代に多い介護離職を避けるための知恵 介護保険や介護休業の基本を知っていますか

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「もっと早く介護保険サービスを使って、仕事を続ける方法を考える手もあった」。暁子さんには後悔があります。50代で正社員を辞めてしまうと、また正社員として再就職するのは年齢的に難しく、給料も以前のように高くは望めません。また、友人との付き合いが減ってしまうため、社会とのつながりも失ってしまいました。

82歳の母が転倒骨折で要介護状態に

介護離職の危機に遭いながら、回避したケースもあります。東京都新宿区に住む杉野基男さん(仮名、52、当時)は2014年、同文京区の実家で生活する当時82歳の母が転倒骨折したのをきっかけに、要介護状態になってしまいました。

3人きょうだいはいずれも親元を離れていたため、誰が面倒を見るのかで意見が折り合わず、長男の基男さんが家族を代表して地域包括支援センターに出向き、この件を相談しました。

その後、ケアマネジャーの勧めにより、お母さんの入院期間中にデイサービスや訪問介護事業者を選定しました。手が空いている家族が週末を使ってデイサービスを見学するなどして、その結果をほかの家族にメールをして情報共有に努めたそうです。さらに、お母さんの退院前に家の中や玄関外に手すりを取り付けて環境整備を行いました。

お母さんが退院して間もなくは、介護休業を利用できる基男さんのきょうだいたちが、その制度を活用してお母さんの家に寝泊まりしました。その後、基男さんのお母さんはリハビリを続けた結果、自分の力でトイレに行けるまで回復しました。入浴や食事は、既存の介護保険サービスや宅配弁当で賄えるため、家族は母の生活に目途が立ちました。

基男さんは、近所にもお母さんの状況を説明していました。家のシャッターがボタン1つで開閉可能であったというもの功を奏し、お昼になってもシャッターが開いていないときは、連絡をもらうという緊急時対応を併せてお願いできました。みんなで、地域で高齢者を支えるという状況を作り出すことができたわけです。

速やかに専門機関に相談し、専門家の意見に従って入院期間中に準備を行い、介護休業という社会制度を活用した結果、家族が離転職をすることもなく切り抜けられたのです。きょうだいはいずれも実家から車で1時間程度のところに住み、お母さんに認知症状がなかったことも幸いしましたが、早い段階から相談し、家族が協力して対応したことが離転職の問題とならなかった最大の要因と分析できます。

親が要介護状態になったとき、離職・転職を初めから選択するのではなく、周囲と相談して今までの生活を続ける方法を見つけることが、実は親の介護と長く付き合える最善の方法です。冒頭の暁子さんのように、介護保険は有効な手段です。ただ、その手続きを詳しく知っている人は意外と少ないかもしれません。

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