ロシアの報道官はトランプ当選後に、外交に関する「両氏の概念的なアプローチが酷似しているのは驚くべきことだ」と述べた。世界的な統合や民主化から距離を置き、国家主義や権威主義を志向する点において、トランプとプーチンの利害は今のところ、一致している。
米国にとって、ロシアは大西洋の向こうの脅威の1つに過ぎない。弱体化して激しい態度に出てきたロシアとは異なり、米国経済に深く投資している中国は、南シナ海での行動を通じて、米国が構築した安全保障上の防波堤を切り崩そうとしている。
「パクス・アメリカーナ」の退潮
米国最大の戦略パートナーである欧州連合(EU)は、英国の離脱決定で大打撃を受けた。欧州大陸でもハンガリーとポーランドで権威主義が高まり分裂の度が強まっている。米国のみならず「パクス・アメリカーナ(米国による平和)」の退潮は、極めて現実的になりつつある。
トランプの外交政策の先行きは不透明だ。確固としたイデオロギーや公職の経験がない、素人のテレビスターがした公約は、人気取りが主な目的だった。新国務長官として、ブッシュ政権で国連大使を務めた強硬派のジョン・ボルトンが候補に挙げられている点からしても、米国の対欧関係は再燃しそうだ。
トランプは当選前から、北大西洋条約機構(NATO)に対する米国の軍事的支援の今後は、加盟国の資金負担次第だと語り、西側の安保関係者を震撼させた。太平洋地域でも日本と韓国に対して、同様のことをした。