トランプ当選で「プーチン」がほくそ笑む理由 似たもの同士は世界をどう変えていくのか

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トランプ批判論者の一部は、米国の市民社会は強じんであり、米国憲法には多数派による横暴を抑える機能が備わっているとして、トランプが大統領になっても大惨事にはつながらないと信じている。

確かに、米国の道徳は、冷戦期に起きたマッカーシズムやベトナム戦争などの大惨事に対抗してきた。だが、 トランプほどに民主主義制度と理想を軽蔑した大統領は、現代に入って見当たらなかったのも事実だ。

トランプの行動見守るプーチン

プーチンがロシアや隣国で民主的改革を押しとどめ、19世紀当時のような勢力圏の構築に努めているのに対し、トランプがどう出るかは不透明なままだ。だが、プーチンにしてみれば、米国が世界に対する唯一の超大国としての立場を放棄してくれるのであれば、トランプとの親密な関係を保つことには、十分すぎる価値がある。

ローマ帝国衰退からオスマン帝国に至るまで、歴史には、起きてみなければどうなるかわからなかった例が数多くある。米国の衰退は不可避ではないものの、将来の歴史家は、米国を再び偉大にすると唱えた億万長者による選挙が、国家主義や外国人嫌悪に加え、経済の大変動で揺れ動いた社会に向けた公約の乱発に彩られていたことを思い返すかもしれない。

今後4年間で何が起こるにせよ、トランプ当選は地政学的な光景を、根本的に変えてしまったのだ。

(敬称略)

筆者のグレゴリー・フェイファー氏は、「Russians: The Power Behind the People」の著者。このコラムは同氏の個人的見解に基づいている。

 

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