【三淵啓自氏・講演】仮想空間「セカンドライフ」におけるコミュニティマーケティングの新たな可能性(その3) セカンドライフ成功のファクター4つのポイント 後編
RoppongiBIZ*東洋経済提携セミナー
講師:三淵啓自(デジタルハリウッド大学大学院教授)
2007年12月4日(火)19:00~ 六本木アカデミーヒルズ
●成功のファクター4 ビジネスチャンス
4つめのファクターにビジネスチャンスがあります。セカンドライフ内で使われている通貨をリンデンドルといいますが、リンデンドルはRMT(リアルマネートレード、※)のシステムによりドルに換金できます。セカンドライフでは1日に、約2億円のお金が動いています。これは小さな国の国民総生産に近いくらいのレベルで、2008年、09年にはメタバース全体で2兆円規模、つまりガーナなど発展途上国並みの経済規模になるだろうという指標もでました。
実際セカンドライフで本当に儲かるかというと、2006年12月のデータでは、5000ドル(約53万円)以上儲けている人が90人、この時点でセカンドライフの人口は500万人以上いましたからほんの一部と言えます。
かつてはアフィリエイトで一攫千金という話や、ブログで儲かるなどという話もありましたが、参入障壁が低いということは基本的にその中で儲けるのは難しいということです。これはどこの世界でも同じ原理で、儲けるにはそれなりの努力が必要だし、それなりの差別化が必要です。
どのような差別化が必要かというと、コミュニティマーケティングの話を思い出していただければいいと思いますが、人と人とのつながり。これがすごく大きいです。
私の知り合いで、服を作って販売し、月に2000万円の売上があるアメリカ人がいます。彼女は毎日のようにセカンドライフに入っています。そして中でユーザーとコミュニケーションをとり、ユーザーのニーズに合せた商品を次から次へと作っています。それが基本的な信頼関係を築くこととなり、しっかりとしたビジネスにつながっています。セカンドライフはそういう世界なのです。
貨幣価値は発展途上国と同じくらい大変低く、今は1000リンデンドル=440円くらいです。実は利用規約に書いてありますが、リンデン社はリンデンドルの買い取りはしません。
セカンドライフ内で使われているリンデンドルはあくまでもゲームを使う権利で、任天堂のゲームのコインとまったく同じものなのです。
ではなぜドルに換えられるのか?という疑問があると思いますが、ゲームのプレイヤー同士でリンデンドルを売りたい人と買いたい人がオークションサイトで取引をしているという形になっています。ですから変換ではなく、あくまでもユーザー同士の取引です。ただし、価格がある程度安定するように、リンデン社が調整に入っています。
イーベイなどのオークションサイトでもリンデンドルは扱われています。ここで面白いのは、イーベイというのはアメリカで一番大きなオークションサイトですが、プレステなどゲームソフトのキャラクターやアイテムは販売できないことになっているにもかかわらず、セカンドライフの中のものだけはオークションしてもよいことになっています。著作権がクリアになっているからです。
リンデンドルは日本円で売っても合法です。例えば、セカンドライフでお城を作って誰かに100万円で売っても法には触れません。これは知的財産の販売権になるので、普通の商売と同じ。ビジネスチャンスはまだまだこれからあると思います。実際に、昔のキャデラックのような車を限定で作ってオークションにだしたところ、1台200万円近くで売れたという話があります。そこにブランド価値があり、いいものであれば、それ相応の価値で売ることも可能な世界なのです。
日本の大学でセカンドライフに参入を表明しているところはまだ少ないのですが、アメリカではほとんどの有名大学を含む85校が明確に学校として参入しています。
メキシコの大学では、マヤ文明の小さな村を再現し、服を無料で配り、来た人に村の生活を体験してもらうという面白い試みをしています。この体験により、なぜそこに階段があるのか、どうしてこういう形の住居になったのかを探っていこうという実験もされています。
NASAと協力して、実物大のロケットをたくさん並べるなど、リアルであれば大変お金がかかることもやられています。
(その4に続く、全5回)
(※)RMT(リアルマネートレード):オンラインゲーム内のお金やアイテムを現実世界の現金で取引すること
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