【三淵啓自氏・講演】仮想空間「セカンドライフ」におけるコミュニティマーケティングの新たな可能性(その4) セカンドライフ 企業が参入するにあたって

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RoppongiBIZ*東洋経済提携セミナー
講師:三淵啓自(デジタルハリウッド大学大学院教授)
2007年12月4日(火)19:00~ 六本木アカデミーヒルズ

その3より続き)
 企業によってセカンドライフへの参入の仕方はまったく異なります。中小企業にとって、セカンドライフの中にはいろいろな可能性があり、多くの人とネットワークが築けるという点も大きな利点です。
 大手企業の参入目的としては、コーポレートアイデンティティ、企業のブランドイメージをユーザーに伝えるというものがあります。環境への取り組みや社会貢献、CSRがセカンドライフの中で公開されていれば、たいへん効果的です。

 今は、セカンドライフの中でものが売れる状況ではありません。市場がまだ成熟しておらず、アーリーアダプターが多いからです。アーリーアダプターというのは、積極的に新しいものを取り入れたり、挑戦したり、自分たちでものを作れる人たちのことです。彼らは企業が作って売っているものをそのまま買うようなレベルの人たちではないのです。
 また、ビジネスが目的の人は商売ネタを探しに来ているので、他のビジネスに便乗してものを買うという購買行為にはつながりません。

 いいものがあれば買うといった、いわゆる一般の消費者と呼べる人たちが参加者の80%を越した時点で初めて、セカンドライフ内での広告効果、宣伝効果が見込めますが、現状ではそのレベルにまで至っていません。

●セカンドライフ参入の問題解決策

 これらの問題を解決するための提案の1つとして研究室では、ICS(インターアクティブ・シネマ・システム)を誰でも利用できる場所に置いています。ICSは、セカンドライフ内での自分の動作を自分の外からの目で確認することができるシステムです。
 ハッドという無料のオブジェクトを装着して中に入り、足元にあるボタンを押すと自動的に始まります。始まると見ている人のカメラをプログラムが自動的にコントロールする仕組みになっています。音楽に合せて踊りだすと、それで踊る自分の姿を見ることができます。これは、その人の動きや目線をオーバーライトすることができるというセカンドライフの仕様を活用したもので、このシステムによってセカンドライフの使い方が全然わからない人でも楽しむことができます。

 一般のユーザーが楽しいからセカンドライフを使うようになる。セカンドライフ内の自分のアバターにもアイデンティティがあって、このアバターで自分が見られているとなると、ダサい格好はしたくない、きれいな格好をしたいということになる。そこで商品やアクセサリーが売れていくという流れになります。現に海外で服やアクセサリーがどんどん売れて、経済規模が拡大しているという理由がそこなのです。
 セカンドライフの可能性はまだ出し切れていません。今後どうなるかわからない部分が山ほどありますが、現在は、いろいろな実験を通して、使用方法を考えているという状況です。

(その5に続く、全5回)
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