金利上昇で騒ぐ「頭の悪い」人たち 髙橋洋一が語る バーナンキの言葉
これと対照的だったのが、ローレンス・サマーズ(元アメリカ財務長官、元ハーバード大学学長、経済学者)ですね。彼なんかは、日本で同じような質問を受けたときに、馬鹿にしくさった感じで「So what?(だから何?)」と答えていましたよ。
名目金利と実質金利の違いがちゃんとわかっていない人からしたら、「なんで?」という感じでしょうけど、世界の標準的な経済学からすれば、こういう区別は極めて当たり前なのです。
経済学者であるバーナンキも、「どうしてこんな馬鹿な質問をするのだろう」というのが本音だと思いますが、本当に人柄がいいので、丁寧に答えてしまうんですよね。
株価のためにアベノミクスをやってるわけじゃない
――一方で日本のアベノミクスについては、バーナンキ議長は非常に高く評価しています。5月末から日本が株価急落や金利上昇に見舞われたことについては、バーナンキはどう思っているのでしょうか?
一言で言うと、「まったく気にしていない」と思います。もちろん市場では「このまま落ちていくんじゃないか」という心理が広がりますし、それをあおって喜ぶ連中もいますから、多くの人がちょっと不安になる気持ちはわからないわけではありません。
しかし、金融政策をやる側は、現実面の多少のブレというのをいちいち気にしたりはしません。政策当局からすれば、これくらいのボラティリティ(価格変動率)というのは想定の範囲内です。
なにより、「アベノミクス第1の矢」も含めて、金融政策というのは別に株価を上げるためのものではありません。あくまでも狙いは実体経済をよくすること。そういう原理・原則がわかっていない人は、怪しいエコノミストやマスコミの報道にコロっとダマされてしまうということはあるでしょうね。
バーナンキなんて2008年のリーマンショック以降から緩和策に着手して、まだやり終えていないような状況なんですよ。それでもなんとかここまでアメリカ経済を立て直してきた。アメリカですらこんなに時間がかかっているのに、20年以上にわたって何もしないできた日本は、今やっと重い腰を上げたところです。
本格的に動き始めてまだ数カ月で、日本がいきなり奇跡的に回復するなんていくらなんでも考えられませんし、株価が下がっただけで「頓挫した」と評価を下すのは、あまりに安易です。