金利上昇で騒ぐ「頭の悪い」人たち 髙橋洋一が語る バーナンキの言葉

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なぜ実質金利をみるべきか

――「名目金利」から「予想インフレ率」を差し引いた「実質金利」がなぜ重要なのでしょうか?

企業などの設備投資が最も典型的ですから、それを例にお話しましょう。

何かの投資活動をしようとするとき、私たちは名目金利だけでは判断しないはずです。額面の金額が高いか低いかだけでなく、自分が設備投資することで売り上げがどうなりそうかも一緒に考えるわけですね。投資するときに、利払いよりも売り上げのほうを考えるというのは、極めて当たり前です。そして、どれくらい売り上げが上がるかに影響してくるのが「予想インフレ率」です。インフレになっていけば、売り上げも増えていきますから。

もちろん、名目金利が高ければ高いほど、利払いは多くなります。ですから、名目金利から予想インフレ率を差し引いた数字、つまり「実質金利」が上がるか下がるかが、設備投資のやりやすさに影響します。

名目金利が上がっても予想インフレ率がそれより上がっていれば、売り上げも伸びていくと考えますよね。それなら、名目金利の利払いは大したはことないと、そう判断されるわけです。

ですから、名目金利の上昇というのは実体経済にとってはなんともない。それより実質金利が下がればいいのです。となると、見ておかなければいけないのは、名目金利と予想インフレ率の上がるスピードです。

インフレ目標を設定したうえで、マネーを増やしていく「リフレ政策」をやると、必ずすぐに予想インフレ率が上がります。しかも不況のときには、名目金利よりも予想インフレ率のほうが早く上昇します。結果として、実質金利が下がる。これだけのことです。

――バーナンキが6月19日のインタビューで、「低すぎる物価上昇率は、デフレの危険性を強め実質金利が高くなることなどから問題だ」と言っているのも、そういうことですね。なぜ日本の識者やメディアは「実質金利」に目を向けないのでしょうか?

私がプリンストン大学にいた頃、経済学部長だったバーナンキはいつもそういう説明をしていました。私自身もそれが理論として正しいと思っていましたし、その正しさをバーナンキはFRB議長として実践し証明してみせたわけです。

名目金利の上昇ばかりを騒いで、実質金利の低下を取り上げない人たちの議論については、正直に言ってしまうと……、「頭のキャパシティが小さいだけ」ではないかと思っています(笑)。2つのことを同時に理解するというのは意外に難しいですから、名目金利までしか頭に入らないのではないでしょうか。

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